「低価格で高品質」を実現する商品生産体制
南氏は「ブランドとしての好き嫌いはあるにせよ、ユニクロ商品の素材と縫製はトップレベルだ」と語る。
「アイテムによって異なりますが、ユニクロ商品の原価率は30~40%の間で推移しているはずです。一方、百貨店やファッションビルに入っていて、値段がユニクロ商品の1.5~2倍するようなブランドのなかには、売れ行き不振のため原価率をどんどん下げているところもあります。原価率25%とか20%とか、ヘタしたら18%などともいわれていますね。
百貨店やファッションビルのブランドはそれほど大量の枚数をつくるわけではないので、ひとつの商品につき1000枚~5000枚くらい。しかしユニクロの場合、ひとつの商品を最低でも10万枚~50万枚といった規模でつくるわけです。一般的に洋服というのは大量につくればつくるほど品質が安定し、縫製のクオリティーが高まります。それは縫っている人の手が、次第に慣れてくるからです。
なかにはユニクロと原価率が変わらないブランドもありますが、つくる枚数が100倍以上違うとなると、縫製の面ではユニクロ商品のほうが優秀だといえるでしょう。1枚あたりの工賃も安くなりますし、品質が良いものを低価格で販売できるのには、そのような背景があるのです」(同)
やはりユニクロは、ほかのブランドには簡単に真似できない、大企業ならではの強みを存分に活かしているということか。
「『ユニクロのブランド自体や品質は否定しようがない』というのが多くの業界人の共通認識です。ただ、どうしても個人の好みというものがありますので、満点の評価を取れるアパレル企業なんて存在しないでしょう。それを差し引いて消費者視点から言及すると、ユニクロは『最新のトレンド商品が欲しい』という方には物足りないかもしれませんが、素材や縫製に一定の品質を求める方には、ベストマッチなブランドではないかと思います」(同)
先ほど取り上げた柳井会長のコメントは、「ユニクロは品質で評価されているブランドですので、品質を落とすことは絶対にしたくなく、むしろ品質を上げる方向でやっていきたい」と続いていた。
今後もなんらかの事態により、商品を値上げするか、価格を据え置いてクオリティーを落とすかの選択を強いられる局面がきてもおかしくない。これはアパレル業界全体の課題だろうが、その際ユニクロがどんな工夫や底力を発揮することになるのか、今後も注目していきたい。
(文=森井隆二郎/A4studio)