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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前の画像1ニコン本社が所在する品川インターシティC棟(「Wikipedia」より/Kakidai)

 一眼レフカメラの世界的大手ニコンが4月3日に“慶弔両方”の発表を行った。「慶」のほうの発表は、同社の100周年記念製品の発表だ。「弔」の発表とは、光学事業の設計事業を集約するということだ。

 カメラ業界にあって名声をほしいままにしてきたニコンは、現在重要な戦略的岐路に立たされており、私の分析では例えば10年後に存続が疑われるような可能性も出てきた。

100周年に新製品を出せないトップ企業とは

ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前の画像2

 ニコンは1917年に岩崎小彌太の個人出資により、日本光學工業株式會社として設立された、三菱グループの中でも名門企業の一つだ。その同社が100周年を記念して発表した製品は、「名機」と呼ばれたニコンFをモチーフにした2分の1サイズのメタルダイキャストミニチュア。一部パーツは動くが、机の上の置物だ。

 そのほかの新製品「D500 100周年記念モデル」は、1999年に誕生した同社のDXフォーマット一眼レフのレプリカ。これは撮影できる。ただし、当たり前だが新しい機能があるわけではない。「D5 100周年記念モデル」も59年にデビューした、当時のニコンのフラッグシップ一眼レフのレプリカ。

 そして、そのほかに発表された記念製品を見て、私は失望した。特に、一眼レフの分野で最高峰といわれたメーカーの100周年を記念する製品群の発表である。画期的な新製品、新技術の発表がまったくなく、ただ過去の主要製品のレプリカを少量再生産してお茶を濁している。あの先進的な一流企業のイメージにまったくそぐわない。

 ニコンも、きっと臍を噛むような思いがあったのだろう、これらの記念製品発表は同社の「創立100周年記念サイト」上での発表で、実際に会見して披露されたわけではない。

 実はニコンは、100周年を記念して大型製品をリリースするどころか、去る2月に高級コンパクト・デジタルカメラ「DLシリーズ」3機種の発売中止を発表している。およそ、B-to-Cの企業で新製品を投入し続けないトップ・メーカーなど聞いたことがない。

 そして「弔」の発表だと私が見るのが、光学事業の開発部門の集約だ。光学事業の設計部門の集約という今回の組織変更には、説得力がない。ニコンの主要事業は3つある。カメラ(17年3月期の予想売上3,800億円、対前年比27%減)、半導体露光装置と液晶/有機ELディスプレイ向けのFPD露光装置だ(合計して同2,480億円、同39%増、ただし増のほとんどは後者)。そのほかにメディカル事業は同190億円で、60億円の赤字予想と、まだ海のものとも山のものともわからない。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
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