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星野達也「お父さんのためのイノベーション講座」

「振り込め詐欺撃退」機能付き電話が大ヒット…その画期的かつ驚愕の機能とは?

文=星野達也/ノーリツプレシジョン取締役副社長、ナインシグマ・ジャパン顧問

詐欺対策強化機能を搭載した電話機とは

 シャープは、固定電話の購入者の7割が60代以上であることに着目し、その年齢層の利用状況を調査した。その結果、振り込め詐欺被害者の約8割が60歳以上となっていることが分かり、その顧客層に向けて本製品を開発したのだ。

 本製品の主な特徴は、以下の通り。

(1)着信時メッセージ

 電話をかけてくる人に対し、「ただ今、振り込め詐欺対策モードになっています。この通話を録音します。あなたのお名前をおっしゃって下さい」というメッセージが流れる。録音された名前を聞いてから、受話器を取るかどうか判断できるのだ。振り込め詐欺の場合、犯罪者は足がつくことを何よりも嫌がるため、ここでかなりの割合で撃退できることとなる。

(2)迷惑電話自動判別機能

 万一、怪しげな電話に出てしまった際にも、「迷惑電話自動判別機能」が付いており、ドアホンのチャイム音を鳴らして、電話を切るきっかけをつくってくれたり、振り込め詐欺対策メッセージを流してくれたりする。当然その間の会話も録音している。

(3)あんしん相談ボタン

 もしも怪しい電話に出てしまったとしても、切った後に「あんしん相談ボタン」を押せば、登録した相談相手(たとえば息子)につながるため、即座に情報確認が可能。

(4)迷惑電話フィルタ

 警察や自治体から提供を受けた迷惑電話番号情報などを使い、振り込め詐欺や悪質なセールス電話を自動で着信拒否。着信音も鳴らない。

 最近の振り込め詐欺は「劇場型」と称され、たとえば犯罪者が警察官になりきって電話をしてきて、パニックに陥っている間に弁護士や金融機関を名乗る人物が複数回、しかもあえて非通知でなく番号を開示してかけてくるような凝ったケースも出てきている。2015年は、振り込め詐欺被害総額が390億円で過去最高となり(警察庁発表)、いまだに増加傾向にあるようだ。

 なんといっても犯罪者らが最も嫌がるのは、声の録音であるが、あえて録音していることを伝えるという発想は、おもしろい。

 市場のニーズを的確に把握し、ユニークな発想で画期的な商品を実現してしまうシャープのしたたかさ、ものづくり力には、改めて感心させられた。いまだ厳しい経営環境が続くシャープであるが、「目の付けどころがシャープでしょ。」のキャッチフレーズ通り、今後も世間をうならせる商品に期待したい。
(文=星野達也/ノーリツプレシジョン取締役副社長、ナインシグマ・ジャパン顧問)

星野達也/ノーリツプレシジョン株式会社 代表取締役社長、ナインシグマ・ジャパン顧問

星野達也/ノーリツプレシジョン株式会社 代表取締役社長、ナインシグマ・ジャパン顧問

東京大学工学部地球システム工学科・同大学院修了。ルレオ工科大学(スウェーデン)客員研究員。1999年に三井金属鉱業入社、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、ナインシグマ・ジャパン(現ナインシグマ・アジアパシフィック)を共同創業。研究開発費100億円以上の企業を対象に、150社とプロジェクトを実施し、オープン・イノベーションのビジネスモデルを国内で展開する。2016年ノーリツプレシジョン株式会社入社、2017年同社 代表取締役社長に就任。

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