ママスクエア誕生のきっかけはパパとしての原体験?
このキッズスペースつきワーキングスペースという業態は、どのようなきっかけで誕生したのか。実は、自身も3児の父親である藤代氏にも「自分が子育てにかかわれていない」という反省があったのだという。
「当時、僕もなるべく土日は家庭に目を向けるようにしていたのですが、そのなかで、妻が子どものちょっとした行動に対して怒ることに気づきました。子どもの行為自体は、パパ目線ではたいしたことはない。しかし、ママ目線では『これ注意するの、3回目よ』となるんです」(藤代氏)
これは、子どもと過ごす時間が異なる父親と母親の間に生じがちな「齟齬」のひとつ。家の中の空気がピリピリし、「まずい」と思った藤代氏は、奥さんに「映画でも喫茶店でも行って、リフレッシュしておいで」と話したという。
「それで、2~3時間ぐらいでしょうか。私が子どもを見て、妻は近所のカフェに1人で行きました。すると、つきものが落ちたかのように妻がすっきりした顔で帰ってきたので、驚いたんです」(同)
この「2~3時間」がきっかけとなり、かつてのピリピリした空気が嘘のように家庭内の雰囲気もよくなった。この経験が、藤代氏にママスクエアにつながる「気づき」を与えたのだという。
「親として、頻繁に報道される子どもの虐待のニュースに心を痛めないはずがありません。しかし、虐待をなくすには、子どもを守るだけでは足りない。『お母さんが大事なんだ』ということに気づかされたのです」(同)
子どもが伸び伸びと成長するためには、母親がストレスを発散しつつイキイキと毎日を過ごす必要がある。この気づきを元に、藤代氏は託児スペースを併設することによって母親が息抜きできる「親子カフェ」を思いついた。そして、長年勤めていた会社を辞め、後のママスクエアにつながる親子カフェの事業を04年に立ち上げたのである。
「主婦はすぐ休む」は本当か?実は優秀な戦力に
政府は「女性が輝く社会」の実現を打ち出しているが、実際には出産した女性が仕事を辞めざるを得なくなり、そこでキャリアが閉ざされてしまうケースが多い。藤代氏は、それは「非常にもったいない」と感じているという。
「会社員時代から、女性の優秀さは肌で感じていました。女性は協力し合うことができるし、まわりがよく見えている。それは、親子カフェを立ち上げてから、より強く感じましたね。親子カフェの1号店をスタートしたとき、スタッフに加わってもらった主婦の方たちの勤勉さには驚かされました」(同)
これまで、企業側は「子どもの体調や育児を理由に休まれると困る」「残業ができないなど融通がきかない」と小さい子どもを持つ母親の雇用を敬遠しがちだった。藤代氏が親子カフェの採用で面接した母親のなかには、「書類も見ずに門前払いをされた」と話す人もいたという。