ソブリンの取扱い
さらに悩ましい問題は、ソブリン(国債等の信用リスク)の取扱いである。現在のバーゼル規制では、自国通貨建ての国債は、格付にかかわらず、信用リスクをゼロにすることができる(各国裁量)となっている。また、大口信用供与規制においても、国債は対象外である。しかし、ドイツなどの一部のユーロ圏諸国は、こうした取扱いが自国銀行による欧州周縁国の国債の保有を容易にし、ユーロ圏の債務・銀行危機を深刻化させたとして、規制の見直しを主張している。
このため、2015年1月のGHOS会合において、バーゼル銀行監督委員会が、ソブリンの規制上の取扱いについて、予断を持たず、「注意深く、包括的に、時間をかけて」検討するとされた。
このソブリンにかかるバーゼル規制の見直しについて日本は、金融政策や財政政策などに与える影響が大きく、必要ないという一貫した立場で協議に臨んでいる。GDP(国内総生産)の2倍を超す財政赤字を抱える日本にとって、ソブリン規制の見直しは劇薬となりかねないためだ。現状、リスクフリーとされる国債がリスク資産と認定され、低水準でもリスクウエイトがかけられることになれば、影響ははかり知れない。
冒頭の七夕統合会見で、國部頭取は次のように語っている。
「リーマンショック後、国際金融規制の強化の議論が行われていて、いまも最終的な自己資本規制の議論がまだ続いている部分があって結論が出ていない。大変厳しい規制がかかってきた。その規制のもとではリスクアセットをコントロールしないといけませんし、資本効率、資産効率が大変求められる。そうすると国際金融規制のもとにある三井住友FGの傘下に地銀が入っている場合に、例えばリスクアセットを使うことであったり、あるいはリターンを改善することをしていかなければならない。そういうことを迫られる環境になる。したがって我々グループの中にあって、みなと銀行、関西アーバン銀行が制約を受けたかたちで業務を行うよりは、新しくつくられる統合グループに入ったほうが両行が成長できるということで判断した」
そして、もし国際金融規制が緩ければ今回のような再編はなかったのかとの問いに、「難しい質問だが、どうですかね。ひょっとしたら動かなかったかもしれない」と答えている。バーゼル3の圧力はそれほど大きい。
(文=森岡英樹/ジャーナリスト)