責任と仕事と自由を得る
そうした自身の経験に照らし合わせて、副業が解禁された会社員に選択肢の1つとしてお勧めするのが、勤務先の事業とは関係のない業界の小規模事業者への投資です(取り組む際には、会社のルールに抵触しないかを弁護士や社内の該当部門に事前に確認してください)。
理由としてはまず、リスクはあるので金銭的なリターンは確約できないけれども、好きな事業に取り組むことで心理的なリターンが得られることがあります。好きな事業だけに取り組んで、そこまで興味が持てない事業には取り組まなければいいだけです。
矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、小規模のM&A(合併・買収)取引の市場自体が発展途上であるため、自分にとっての良い会社に出会える可能性が十分にあります。たとえば投資目的の不動産市場参加者は300万人を超えるともいわれ、さらに参加者の評価軸は投資リターンの考え方で共通しているために、良いものは相応に高く、そして良い物件でお買い得なものがあったとしても、少しでも躊躇するとあっという間に他の人に奪われてしまいます。情報をいかに早く取れるかのネットワーク勝負のようになっています。
小規模事業者については、そうはなりません。競合となる参加者はそれほど多くないので、自分が動けば動くほど情報が追加されていき、納得いくまで検討できます。志向・評価軸は人それぞれであるため、活動すればするほど良い出会いに巡り合う可能性は増え、すぐに他人に機会を奪われるようなことはあまりありません。
たとえばラーメン店が引き取り手を探していた場合、ラーメンが好きな人にとっては夢中になって検討しますが、そうではない人にとっては価値がありませんので、そういう人は検討に乗り出しません。よって、ラーメン好きの人はじっくりと分析できます。
会社員と並行することに意味がある
ただし注意したいのは、投資した会社から十分な利益が得られ続けるという確信がない限りは、会社員を辞めることはお勧めしません。自分の生活を安定させているからこそ冷静に見えてくることも多々ありますし、もしも資金繰りが厳しくなったときに、資金の出し手は限られているために自分自身が追加投入できるようにしておかなければ、精神的なプレッシャーが過剰になり得るからです。
もちろん、「自分が貯金を崩してまでして得た事業に対して覚悟が足りなくなり、行動や判断が甘くなって良い結果も生まれないので、すっぱりと退路を断つ」という考え方もありますし、それを否定はしません。そもそも自分はなんのために投資を行うのかということと合わせて決めればいいのかと思います。