革新機構に翻弄されるJDI
三洋電機副社長を務めた本間氏は、15年6月にJDIの会長兼CEOに就任。主要顧客である米アップルのiPhone販売不振などで16年に資金繰りが悪化。株価も低迷し、革新機構が750億円の金融支援を決めた。本間氏の経営責任を問い、革新機構がJDIの経営体制の刷新を迫ったかたちだ。JDIは、革新機構がソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレイ事業を統合して、12年4月に発足した。
白山工場の大型投資も社内には異論があったが、革新機構から派遣された社外取締役が工場建設を推進したとされている。白山工場は液晶が有機ELに置き換わる技術トレンドを読み誤った失敗の典型だ。
経営者としての力量を、きちんと吟味することなく本間氏をJDIに呼び寄せたのは、ほかならぬ革新機構だった。その本間氏を、今度は革新機構が解任した。
白山工場の建設を強行した社外取締役は退任するが、革新機構の勝又幹英社長以下2人がJDIの社外取締役に就くことが5月18日、発表された。革新機構から派遣される社外取締役は1人から2人に増える。
取締役に降格される予定だった有賀氏について会社側は、「経営の連続性を重視し、社長兼COOを続投することになった」と説明するが、有賀氏本人はどのような心境なのだろうか。力を発揮することができるのか。
有賀氏の降格を決めたのも、一転して留任を決めたのも革新機構である。こんな人事のやり方はない。革新機構に翻弄されるJDIが、独立した企業として存続できるかどうかの正念場が1年以内にやってくる。
会社側は18年3月期の利益の数字を開示していない。「18年3月期は黒字になるのでしょうね」との記者からの質問に、有賀氏は「できるかできないかは申し上げられない」と答えた。先行きに自信を持てないのだろう。
17年4~6月期の連結営業損益は150億円の赤字(前年同期は34億円の赤字)。17年3月期決算と同時に、こう公表した。
5月10日にはアナリスト向け決算説明会も開催されたが、「有機ELの開発を加速する」と強調するだけで、主力の液晶事業をどうするのかについては触れなかった。自社の技術に関して確かなる自信・展望がないためだと見る向きが多い。
正念場であることを株価が映し出している。JDIは14年3月に900円で株式を公開して以来、一度もこの価格を上回ったことがない“落第生”である。主幹事証券は野村證券。公開価格が高すぎたといわれている。5月12日に201円の年初来安値を更新した。
株主も経営者も従業員も報われない会社になり下がってしまったのである。
(文=編集部)