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テーブルに置かれている伝票に、マラドーナのサインを米粒ほどのサイズで書いて、レジに持ってゆきます。「1600円です」――。レジは開けっ放しで、レシートもくれませんでした。レシートを要求すると、快く領収証を書いてくれます。このときにぼくらの注文に係る伝票や領収証の控えが、実地調査時に確認できなければ、売り上げを除外している可能性があります。伝票や領収証控えは売り上げの根拠となるものです。それを廃棄することで売り上げを減らすという手口は、調査をしているとかなりの頻度でみかけます。調査の初歩として、すべての調査官が見逃さないでしょう。
緊張の実地調査当日
内観調査や準備調査の資料を整理して、実地調査を迎えます。当日は、10時に本店に出向くと、2階の個室に通されました。そこで、「社長です」と挨拶をしたのは、ニコニコと料理を出した厨房の男性。彼はぼくの顔を見るなり、「あれ? 食べにきたことありますよね?」と尋ねてきました。口から心臓どころか残りの四臓が飛び出しそうになるのを必死に堪えて、「いいえ」とだけ答えます。
いつも通り、世間話をしてから帳簿・書類に目を通し、日々の注文伝票を確認します。注文伝票は、日ごとに袋に雑然と収められ、5年分保管しているそうです。ぼくとお供が来店した日の伝票を見ると、マラドーナのサインが書かれた伝票はありません。ランチの売り上げについて確認すると、レジを打っていないので伝票から売り上げを出しているとのこと。
1階に降り、レジに置いてある領収証控えを見せてもらいました。ぼくのもらった領収証の控えがあります。
「この1600円の会計の伝票はどれですか?」
沈黙する社長。運の良いことに、この日は同じ金額の会計がなかったので、言い逃れができませんでした。社長を問い詰めると、ランチはレジを打たず、売り上げをすべて除外していることを認めました。
修正申告にも応じ、追徴課税には分割で対応、その後、この会社は今まで以上に繁栄したとか、しないとか。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)
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