ひきこもりの自立支援をうたうビジネスでトラブルが続出しているという。
5月22日には、『クローズアップ現代+』(NHK)で「トラブル続出 ひきこもり“自立支援”ビジネス」という特集が放送された。そこでは、ひきこもりの人々を支援する施設で監禁や暴力などのトラブルが頻発しており、さらに高額な契約料を要求されるという実態が伝えられた。
ある20代女性(Aさん)は、そうした業者の被害に遭い、親は契約金として約570万円を支払った。今、損害賠償を求める訴えを起こしているが、その代理人を務めているのが弁護士の望月宣武氏だ。6月5日に行われた第1回口頭弁論を踏まえて、ひきこもりの自立支援ビジネスをめぐる被害の実態や業者の手法について、望月氏に話を聞いた。
鍵を壊して拉致、施設に監禁して暴力も
――「ひきこもりの自立支援」をうたいつつ、実態は悪質なビジネスを行う業者の存在が明るみに出ています。そのような業者に対して、Aさんの母親が提訴しました。この事案についての概要から、教えてください。
望月宣武氏(以下、望月) Aさんは、もともとひきこもりではありません。たまたま母親と親子ゲンカをして、Aさんが母親に手を上げました。そこで、母親が親子関係の改善を望み、インターネットで見つけた業者に相談しました。
業者に「それはすぐに解決しなければなりません」と言われ、業者の事務所に出向くと、母親は「お子さんの未来のためです」と7時間ほど説得を受けて、約570万円を支払うことになりました。このお金は、翌日には支払っています。
そして、業者はAさんが住むマンションに8人で押しかけ、内鍵を壊し、千葉県内の施設と称するアパートに拉致同然で連れて行った上、そこでは暴力も行われていました。Aさんは、施設から逃げて警察に相談しましたが、警察は施設側の「この人は精神疾患がある。脱走した入居者で虚言癖や自傷癖がある」という言葉を鵜呑みにして、調書を取ることもなく、Aさんはそのまま施設に返されました。結局、Aさんは3カ月も軟禁される状態が続きました。
訴訟において、このような拉致、監禁、暴力について、一つひとつ立証することは大変難しいです。ビデオカメラが設置されていたわけではないため、その具体的な状況を誰も記録できていないわけです。そして、当然ながら業者は「そのようなことはやっていない」と反論するでしょう。私たちがそれを証明するには、かなり高いハードルを越えなければなりません。
そのため、暴力や監禁についてではなく、支払った約570万円にふさわしいカリキュラムや支援が受けられていたのかについて追及します。債務不履行として約570万円の返還と、Aさんが3カ月以上も軟禁同然の生活を強いられていたことの肉体的・精神的な苦痛に対しての慰謝料を求めていきます。