理由2:豊洲でできない食のテーマパークが築地でできるのか
築地にどんな施設をつくろうとしているのかわからないが、豊洲につくろうとしていた複合施設「千客万来施設」の建設計画は昨年見送りとなった。築地が豊洲より立地が良いとしても、豊洲で無理なテーマパークが築地で成功するとは思えない。
取り残される場外市場では、それこそ食のミニテーマパークづくりが進んでいる。その隣に、巨大なテーマパークができれば、場外市場は閑古鳥が鳴き、シャッター街となるだろう。
食のテーマパークではなく、ワンダーランドとしてスポーツ施設などをつくるという声も聞かれるが、東京五輪に際し建設されるスポーツ施設以外に、新たにどんな施設が築地に必要なのだろうか。
食に関して言えば、毎週のように全国のどこかで食のフェスティバルが行われている。東京近郊でも、数万人を集客する大きなものから、数百人規模の小さなものまで、毎年数多くの食フェスが開催されている。
それに加え、銀座や東京駅周辺、新宿、渋谷、浅草など、新しく建設されるビルの多くは、ファッションビルではなく、食のミニテーマパークといえるものばかりだ。東京近郊は、ショッピングセンターなども含めて、食の関連施設が飽和状態というより、過剰なサバイバルゲームに突入している。少子高齢化がますます深刻になる5年後に食のテーマパークをつくっても、近隣施設との客の奪い合いを加速させるだけだ。
理由3:豊洲ですら赤字なのに、市場が2カ所で成り立つわけがない
築地ブランドを生かすために市場が必要だとしても、豊洲市場の経営が大赤字であることが想定されているのに、市場を分散すれば赤字が拡大することは目に見えている。しかも、築地市場の取扱高は年々減ってきている。豊洲に移転したからといって、取扱高が増えるわけではない。市場を整理統合するならまだしも、拡大させるというのは時代錯誤も甚だしい。
豊洲と築地の再開発計画を検討するチームをつくっても、役人主導では巨額の税金で箱物がつくられるだけだろう。それよりも、築地跡地の事業コンペを開催し、広く公募して多くの人の知恵を出してもらうほうが期待できそうだ。
しかも、これから需要が減っていく食にこだわる必要はない。白紙の状態で公募すれば、最先端医療の研究施設や病院、介護施設などが一体となった複合医療施設、日本版シリコンバレーなど、いろいろなアイデアが集まるだろう。
移転するかしないかは都知事の判断だが、その後をどうするか、具体的な構想もないまま美辞麗句を連ねるのはあまりにも情けない。「築地の跡地利用については、いい案が浮かびません。皆さん教えてください」と、頭を下げればいいだけだ。
政治には素直さや謙虚さも必要であることを、小池知事には肝に銘じてほしい。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)