功労金2億円に批判「泣いた子どもに飴玉をあげるようなもの」
その後、質疑応答が行われた。
「前年の株主総会では役員の過半数が替わっており、そのうち2人は3カ月もたたずに退任していたが、どういうことなのか」
「大戸屋は定食屋なのに、今回の取締役候補者の10人中7人は金融出身者など門外漢ばかりだが、何をやろうとしているのか」
このような経営陣に対する厳しい指摘が飛んだ。これに対し窪田氏は、役員の早期退任は健康面などの一身上の都合だったと回答。また取締役の人事に関しては、「会社というものは店舗の現場だけがすべてではないので、各自の専門性を会社組織の中で生かす」と説明した。
さらに、2億円の贈呈が予定されている三森氏への創業者功労金について、皮肉めいた批判がなされた。
「2億円という数値を見て、“0”の数を1つ間違えているかと思ってしまった。2000万円ではなく2億円だった。この会社の資本金は14億円程度なのに、そこで2億円ものお金を出したら、屋台骨が揺らぐのではないか。『創業家とのトラブルがあったから口封じのために2億円を渡すのだろう』と悪く解釈してしまう。泣いた子どもに飴玉をあげるようなものではないか」
これを受けて窪田氏は、「従業員の96%が三森氏に感謝していた」という社内アンケート結果に触れつつ、「口封じということではなく、前会長が遺してくれたものに対して、なんらかのかたちで報いていきたい」と金額の決定根拠を説明した。さらに「今回の決定に関し、ご遺族の方と具体的な交渉はしていません」とも付け加えた。
また、別の役員が功労金の額は「他社の事例」「当社の財務状況」「税務的なリスクの有無」という3つの観点に基づいて決められたと補足した。これについて“2億円のロジック”と呼んでいた。
質疑応答が終わると、株主総会は4つの議案の採決へと移った
第1号議案 取締役10名選任の件
第2号議案 弔慰金贈呈の件
第3号議案 創業者功労金贈呈の件
第4号議案 ストックオプションとして新株予約権を発行する件
最大の焦点はおそらく、質疑応答でも批判の的になっていた第3号議案だったと思われるが、いざ窪田氏が承認の拍手を求めると、会場には決してまばらではない音量の拍手が響いた。過半数の賛成を得たとして可決した。
その一方、第4号議案については、「本議案は特別決議ですので、賛否の確認に慎重を期すために、ご賛同いただける株主のかたは挙手にてお願いいたします」とアナウンスし、その場で実際に手を挙げていた株主は少なくなかったが、賛成が3分の2に満たず否決となった。大株主である創業家が反対した可能性が高い。
最後に新任取締役の濵田寛明氏と戸川信義氏の2名が紹介され、午前11時10分に株主総会は終了した。この日の出席者は714名で、昨年の681名をわずかに上回った。
(文=A4studio)