富士ゼロックス不正会計、問題は再び起こる可能性…複雑かつ根深い「リース会計」問題
富士フイルムホールディングスの子会社である富士ゼロックスにおいて不正会計が発覚し、6月12日に第三者委員会報告書が公表された。問題になったのは、富士ゼロックスのニュージーランドとオーストラリアの子会社におけるリース取引だ。ゼロックス製のコピー機などをリースしている会社が多いことからもわかるように、リース取引は同社の根幹をなす取引といってよい。
いったい何が問題だったのか。それを理解するには、リースの会計上の扱いを理解する必要がある。
リースとレンタルは何が違う?
よく聞かれるのが、「リースとレンタルは何が違うの?」という質問だ。
この2つは、法的性質には違いはない。いずれも賃貸借取引、すわなち「貸し借り」だ。ところが、リースは会計的には必ずしも「貸し借り」として処理しない。ここに、リースとレンタルの大きな違いがある。
「貸し借り」として処理しないのは、借り手がそのリース物件をあたかも我が物のように使う場合だ。具体的には、リース期間がその物件の耐用年数にほぼ等しい場合や、リース料の総額がその物件の購入価額に匹敵するような場合だ。そのような場合は、その借り手がほぼ独占的に使用することになるので、あたかも我が物のように使っているということになるわけだ。
このようなリース取引を「ファイナンス・リース」(米国では「キャピタル・リース」)という。この場合、借り手はリース会社から購入資金を借りて、自ら購入したとみなして会計処理する。すなわち、「資金調達(ファイナンス)+売買取引」とみなして処理するのだ。その結果、貸し手にはリース開始時点で売上高が全額計上され、リース物件は借り手の資産として計上される。
ちなみに、「みなす」という言葉は、「実際はそうではないとしても、そういうことにする」という意味の言葉だ。法形式的にはあくまでも貸し借りであり、所有権も貸し手に残ったままだが、経済的実態が「我が物のように使っている」ならば、経済的実態に即した会計処理にするということだ。法形式よりも経済的実態を優先するのは会計全般にみられる特徴である。
ファイナンス・リースに該当しないものは「オペレーティング・リース」という。これはレンタルそのものだ。会計的にもリース料は賃料の扱いであり、その授受があったときに貸し手・借り手はそれぞれ収益と費用に計上するだけである。