富士ゼロックス不正会計、問題は再び起こる可能性…複雑かつ根深い「リース会計」問題
すべてをファイナンス・リースとして処理したゼロックス
第三者委員会報告書によると、今回問題になったリース取引は、富士ゼロックスのニュージーランド販社等が考案した、機器利用量に応じてリース料を変動させるリース商品だ。このリース商品の場合、顧客が短期間で解約することもあり得るので、必ずしも我が物のように使うとは限らない。
ところが、富士ゼロックスのニュージーランドとオーストラリアの販社では、このリース商品のすべてをファイナンス・リースとして処理していたのだ。ファイナンス・リースとして処理すれば、オペレーティング・リースとして処理する場合よりも売上高は多額かつ早期に計上できる。
さらに、「ターゲット・ボリューム」と呼ぶ、契約時のサービス利用想定量を過大に見積もるということも行っていた。実際、事後調査で7割のリース取引がターゲット・ボリューム未達だったことがわかっている。未達だった場合も、売上高の減額修正を行っていない。これによって、売上高の過大計上も行っていたのだ。
ターゲット・ボリューム未達の場合に売上高の減額修正を行わなかったのは明らかにアウトであるが、当該リース商品がファイナンス・リースに該当するか否かについてはグレーな部分もある。
実際、当該リース取引についてニュージーランド子会社は現地会計事務所から「条件を満たしていればファイナンス・リースとして取り扱うことは合理的」という見解を得ている。ただ、それは一般的な契約テンプレートに対して得た見解だったようだ。会計事務所が「条件を満たしていれば」と言っているように、ファイナンス・リースに該当するかどうかの判断は個々の契約に対して行われる必要があるが、それでその判断は必ずしも容易ではない。
国際的にはリース区分撤廃の方向性
どこまでいっても、どちらのリース取引に該当するかの判断には恣意性が伴う。「それならば、いっそのこと、2つのリース区分をやめてしまえ」という方向性に国際的にはなっている。
IFRS(国際財務報告基準)が2019年1月から適用する新しいリース会計基準では、借り手側は原則としてリース取引を区分せず、統一的な会計処理にすることにしている。ただし、貸し手側の会計処理は従来通りなので、今回の富士ゼロックスの問題は依然として起こり得る。
IFRSとの統合を目指す米国基準も、まったく同じ時期から同様のリース会計基準に変更する。
日本基準は今のところ静観しているようだ。リース会計基準を変えればいいというものでもないが、世界のメジャーな潮流から外れた独自路線でいいのかという問題は残る。少なくとも、今や世界の大半を占める「IRFS+米国基準」ユーザーには理解されないだろう。
以前から何かと問題のあるリース会計。国際的な会計基準の方向性も含めて、論点の多い分野である。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)