日本郵政は貯金頼みの経営から転換した。日本郵便とゆうちょ銀行は6月7日、投資信託の販売拡大策を明らかにした。
低金利の時代が続き、郵便貯金の魅力が大幅に低下している。さらに、マイナス金利の影響で、郵便貯金を集めても運用難だ。こうした苦況を打開するために、投信販売による手数料収入を増やすことにした。
投信を販売する郵便局を投資信託取扱局、投信の相談に乗る郵便局を投資信託紹介局という。取扱局は、現在の1315局から年度内に100局積み増す。805局にとどまっている紹介局は7月10日から1万6686局へと、一気に20倍に拡大する。
ゆうちょ銀行の2017年3月期決算によると、預金残高は179兆円で、前期より1兆6000億円増えた。しかし、資金利益(資金運用収益-資金調達費用)は1兆2000億円となり、前期より1300億円減った。資金粗利鞘は0.6%と5年間で最低の水準に落ち込んだ。マイナス金利の影響が色濃く出た。
ゆうちょ銀行と日本郵便は、三井住友信託銀行や野村ホールディングス(HD)と共同で15年8月にJP投信を設立した。資本金は5億円で、出資比率はゆうちょ銀行が45%、日本郵便が5%、三井住友信託が30%、野村HDが20%。投信商品の取扱いを16年2月から始めた。
ゆうちょ銀行の17年3月期の投信の販売額は5443億円。JP投信が寄与し、前期比27%増と大幅に増えた。これで自信を深め、本格的な攻勢に出る。郵便局を投信販売の窓口にすることで、日本郵便に入る手数料収入を増やし、収益改善の切り札にする方針だ。
日本郵便の17年3月期の決算は、豪トール・ホールディングス買収にかかわるのれん等の全額に相当する3923億円を減損損失として計上した結果、最終損益は3852億円の巨額赤字に転落した。
本業である郵便・物流事業の売上高にあたる営業収益は1兆9299億円で営業利益は120億円。営業収益は全体の51%を占めるが、営業利益は同22%にとどまる。