新潟での再編に注目が高まる
公取委が問題視しているのは、1強が圧倒的なシェアを握ることだ。長崎市にはメガバンクが進出しているため市内では圧倒的なシェアにならないが、長崎市以外の地域は離島と同じように100%の独占状態になる。
そこで打開策として十八銀行は貸出債権を他行に譲渡することでシェアを引き下げようとした。だが、取引先に「一時的に譲渡するだけで、統合後に買い戻す」と話していたことが公取委の知るところとなり、6月に入り統合申請は差し戻された。この時点で、ふくおかFGと十八銀行の統合は白紙の状態になったといっていいだろう。
ふくおかFGの統合を、地銀の広域再編のモデルケースにすることを企図した森氏の構想は挫折した。公取委にノックアウトされたのだ。
公取委は7月19日、新潟県の第四銀行と北越銀行の経営統合について、2次審査を始めたと発表した。両行は、経営統合に向けた最終契約を10月にも結び、18年4月に共同持株会社第四北越フィナンシャルグループを設立。2年後の20年、両行の合併を目指しているが、予定通りにいかない可能性がある。
有力地銀の頭取は、「北越銀行に対して統合を“指導”したのは金融庁。新潟を突破口にして九州でも公取委に風穴をあけるという高等戦術なのだが、うまくいくのか不明」と話す。
だが、第四銀行と北越銀行が合併すれば、県内の貸出シェアは5割に達する。公取委はどういう判断を示すのか。長崎の7割の貸出シェアはダメだが、新潟の5割はセーフなのか。公取委は貸出シェアの引き下げを条件に、新潟では統合を認めるのか。長崎に続いて新潟でも統合が頓挫すれば、金融庁が描く金融再編のシナリオは根本から崩れることになる。
別の有力地銀の元頭取は「第四・北越が2次審査入りしたと公取委が発表した時点で、ふくおかFGの案件はアウトだと直感した」と明かしている。
地銀首脳の発言は、ひとつの方向を指し示しているようだ。金融庁がシナリオを書き、主役の座まで奪う“官製合併(推進)”に、地銀はあきあきしている――。そんな証左なのかもしれない。
(文=編集部)