「化け物」ゾゾタウン、「とにかく買わせる」仕掛けの秘密…有名ブランドも大挙して出店
プライベートブランドで参入を狙う
前澤社長が以前から公言しているのが、ゾゾタウンに自社のプライベートブランドを投入するということである。新時代の経営者らしく、前澤社長はツイッターを使って次のように発信している。
「ずっと準備してきた当社プライベートブランドが、ファッション業界の常識や慣習を転覆させる前代未聞のブランドになりそうです。これからのローンチまでを追ったドキュメンタリー番組、どなたか作っていただけませんか?当社広報宛に連絡ください」(2月16日)
「当社プライベートブランドについて、現時点で発表できるポイントは以下です。
・世界初の試みになると思います。
・ICT、IoTをフル活用します。
・企画開始から6~7年かかってます。
・老若男女、広くお楽しみいただけます」(同)
デザイナーの募集も7月から開始している。ビジネスモデル的にはユニクロが展開しているSPA(製造小売)的な方法で商品を開発、製造してゾゾタウンに販売投入するものと思われる。
しかし、この新しい業態は前澤社長にとって新たな挑戦となる。実際、「準備に6~7年かけた」とツイッターで漏らしているように、他社製品を糾合する従来型のECではない、いわばメーカーとなるので企画、デザイン、生産発注、製造・品質・在庫のコントロールなどの経営要素に取り組まなければならない。しかも、既存出店社とは競合関係が発生する。
「経営資源論」の観点から見ると、上記のような経営資源は現在同社グループに存在しないか、潤沢にあるようには見えない。デザイナーの募集を始めたが、機能させるためには組織として社内にオーガナイズして定着機能化させなければならない。そのためにはコアとなる人材が必要だ。他部門とのコーディネーションやはめ込みにも時間がかかる。そんな困難の上に構築されるから「経営資源」となりうるわけだ。
所有していない経営資源を急速に補充するひとつの手段がM&A(合併・買収)だ。スタートトウデイは、M&Aに対して消極的ではない。古着のEC事業を手掛けるクラウンジュエル、「ストアーズ・ドット・ジェーピー(STORES.jp)」などを手掛けるブラケット、電子雑誌書店「マガストア」を運用・開発するヤッパに続いて、15年5月にはECサイトの構築会社であるアラタナを傘下に入れている。
スタートトゥデイがマザーズに上場公開したのは07年12月のことだった。それが10年の間にこの急成長である。前澤社長は創業経営者として、また人間的にユニークで興味が尽きない方なので、稿を改めてぜひ紹介、分析してみたい。
その前澤社長が狙ってきた新業態がいよいよ始動の段階に入っている。必要とする経営資源が現時点で不足している状況で、この稀代の創業経営者がどんな手を打とうとしているのか、そしてそれは思惑どおりに成功するのか。経営戦略的にとても興味がある段階で、目を離すことができない。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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