消費者が企業活動に抱く疑問を考察するサイト ビジネスジャーナル ⁄ Business Journal
コンソーシアムを組んだのには、大きな理由がある。16年末現在で1兆円近い出資を決定していた革新機構が新たに出資できる上限は1兆円。2兆円規模の資金を調達するために政投銀と組んでいるが、こちらも連結総資産は16兆4225億円(17年3月末)に対し、すでに貸し出しに回しているのが13兆2101億円、連結純資産(いわゆる自己資本に当たる部分)は2兆9393億円だから、外部から資金調達しないで貸し出しに回せるのは2731億円。自己資本を取り崩したとしても手元にある現金は9897億円だから、それほど資金に余裕があるわけではない。
両社ができる限りの資金を集めても、2兆円には届かない。そこで外部の企業とコンソーシアムを組むことになったというわけだ。
WDが買収に名乗り出る
ところがライバル企業のSKハイニックスが買収先のコンソーシアムに参加したことに腹を立てたのが、WDだった。WDは子会社サンディスクを通して半導体メモリで東芝と合弁事業を展開している。5月14日には、WDは子会社を通してパリに本部のある国際商業会議所の国際仲裁裁判所に仲裁申立書を提出した。仲裁に持ち込まれれば1~2年はかかる。すでにこの年に債務超過に転落した東芝は、来年3月末までに債務超過を解消できなければ上場廃止になる。
そうしたなかで、当初は融資だけの予定だったSKハイニックスが、3分の1超の議決権付き株式の取得を要求し、協議が紛糾した。さらに大型のM&A(合併・買収)は独占禁止法に違反していないか各国の関係当局が審査する。国によっては半年かかるところもある。つまり、8月末までに東芝は東芝メモリの売却先を決定し、独禁法の審査が開始されなければ、3月末までに買収が間に合わない。
そして8月、大手のメディアは一斉にWDが革新機構などとともに東芝メモリの買収に動き出すことを報じたがこれもまた頓挫、交渉は混乱を極めている。しかしその一方で安易な公的資金による東芝救済には疑問の声も上がっている。革新機構がやろうとしているのは東芝メモリの買収を通した東芝救済のための“迂回資金提供”だ。これは本来の業務とは違う。むしろ東芝本体はきちんと法的に整理し、再生の道を歩ませるべきではないか。そういう意味では革新機構の在り方が改めて問われることにもなりかねない。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
Business news pick up
RANKING
23:30更新関連記事
2024.11.21 18:05
2024.11.21 18:00
2024.11.20 22:21
2024.11.20 20:41