「旧タイプの店舗を改装してイートインスペースを設置すると、約1割売上が増えたというデータもあります。コンビニ各社がカウンターコーヒーを提供するようになり、さらにスマートフォンの普及率が上がったことで、外出先での『休憩ニーズ』も高まったのではないかと考えています。店内ではWi-Fiのご利用も可能で、イートインスペースではコンセントを使えるようにしている店もございます。オフィス街だけでなく、ロードサイドの店舗でもイートインスペースの人気は高いです」(同)
(5)ファミリーマート吹田栄通り商店会店(大阪府吹田市)
最後に紹介するこちらの店舗は、長く続いている商店街に位置する地域密着型の店舗で、イートインスペースがユニークに活用されているという事例だ。
同店は2階建てのため、約40席のイートインスペースを設置。これは通常の約3倍だという。商店街に位置しているため通常の飲食だけでなく、趣味などのサークル活動やNPO、ボランティアといった地元の寄り合いにも活用されている。
少子高齢化で顧客だけでなく、従業員の確保も問題になっている。ファミリーマートでは、自販機型コンビニなどは展開しているが、「無人店舗などは今のところ、考えていない」(同)と言う。買い物の喜びを提供するだけでなく、従業員と顧客がさまざまなかたちで触れ合うことが客商売の使命だとすれば、コンビニ業界は商売の王道・原点に忠実なのかもしれない。
コンビニ研究家がおすすめする、ファミリマートの店舗
経営統合を受けてサンクスからファミマへブランド転換した店舗が、累計2000店を超えました(7月時点)。計画よりも約1カ月早いペースだといい、これは消費者に対するブランド浸透スピードがより強くなることを意味します。そんな勢いのあるファミマのオススメ店舗をコンビニ研究家の田矢信二氏に紹介してもらいます。
未来のファミリーマートを創りあげるためには、一体型店舗の進化が必要不可欠であると考えています。一方で、イートイン型のカフェコンビニは、若い世代の多様なニーズに対応するための“一点突破型”の出店スタイルだと思います。現在、ファミマは5000店以上のイートイン店舗を出店しているので、“イートイン店舗日本一”と言っても過言ではありません。都心部では「2階建てカフェコンビニ」も増えているので、多角的な「イートイン食」(外食でもなく、内食でもないコンビニ内で食べること)のデータも蓄積されていき、それに適応した商品も開発されていくのではないでしょうか。より“コンビニ・イートインらしさ”を演出できるでしょう。
そんななかで私がオススメするファミマ店舗は、「ファミリーマートパレスサイドビル店」「ファミリーマートバスタ新宿店」の2店舗です。
前者は、なんとイートインスペースから皇居が見えるので、ちょっと得した気分になれるお店です。立地特性もあるのか外国人の来店も目立ちます。東京に旅行に行く際は、観光のついでに“ちょい寄り来店”してみてください。
後者は、新宿駅南口・高速バスターミナル「バスタ新宿」にある「待合室・発券所」を訪れる数多くの人々の“不安要素”の解消に役立つお店です。「顧客不満足解消型店舗」であると私は考えています。このような店舗は、通常の店舗面積でなくてもよく、買い物シーンを想像すると「待合室で待つシーン」「バスに乗車したときの飲食シーン」「到着した際の休憩シーン」などの不安解消に役立てば顧客満足度が向上するメリットがあり、ブランド認知・宣伝効果も見込めます。都内はもちろん全国各地へのアクセスも良好で、訪日外国人へアピールできる可能性を秘めた“メディア戦略型店舗”としての位置づけになるのではと推測します。
徹底的な差別化戦略
いろんな変革が現在、ファミマに起きているだろうと感じています。「目に見える変化(店舗・商品など)」と「目に見えない変化(組織・オペレーションなど)」をうまく融合して、“総合戦闘力”を鍛えている段階なのだと分析しています。
基本理念にある「ファミマシップ 感じる、気づく、動く~楽しさと新鮮さにあふれたコンビニへ~」。正しい努力を組織全体で、“ファミマシップ”を持って創意工夫することでファミリー感ある現場に変えようとしているマインドが売場でも感じることが出来ています。
多角化戦略で、さまざまな施策や改革に乗り出していますが、目標はきっと“未来のファミマらしさ”を顧客へ提供することではないでしょうか。
たとえば、世界で服を売るカジュアル衣料品店「ユニクロ」を中心とする組織全体を、リーダーシップで引っ張り、全員経営で「社員全員を経営者に育てる」という発信力のある強い考えを持つ柳井正氏は、「商売は失敗がつきものだ。10回新しいことを始めれば9回は失敗する」と語っています。
ユニクロの急激な企業成長の時に学んだ経験を持つのが、新しくファミマを変える澤田貴司社長です。「爽やかな笑顔×熱い情熱」を持って現場を理解することから始めていると思います。もちろん、社員とのコミュニケーションを大切にすることも澤田流。
日本人の生活を便利にするために、ハイスピードで進化するのがコンビニ業界の特徴です。業界2位のポジションになったことで、トップ企業と比べられる機会も増えてくるでしょう。そして、「セブンイレブンと同じことをしないという選択」も必要になってきます。これを、圧倒的な量で継続することで、トップ企業との徹底的な差別化戦略になります。そのため、ファミマの新ブランド戦略はきっと想像を超える想定外な展開を広げていくでしょう。今から、コンビニ消費者としては、たまらない気持ちになります。まずは、ぜひ、おすすめ店舗や都内・大阪を中心に展開する「2階建てカフェコンビニ」に足を運んで見てくださいませ。
(文=編集部、協力=田矢信二/コンビニ研究家)
●田矢信二(たや・しんじ)/コンビニ研究家
セブンイレブンとローソンでの現場経験を活かし、出店調査・顧客満足度&従業員満足度調査・インバウンド調査等に関わり、企業講演・セミナーなどにも呼ばれる。最近では、中国企業や大手コンビニが集結したコンビニ業界特化型セミナーなどで講演。独自の情報をブログで発信。その口コミが評判で、テレビ・ラジオなどにもメディア出演。
代表著書『セブン-イレブン流98%のアルバイトが商売人に変わるノート』『ローソン流 アルバイトが商売人に育つ勉強会』。調査徹底企業の株式会社サーベイリサーチセンター所属。