2020年11月に六本木で新規オープンした会員制の「相席寿司・蓮華」が、SNSで話題を集めて会員数が急増しているという。耳馴染みのない「相席寿司」という形態、どういったものなのだろうか。
男性は月額5万5000円(税込)、女性は無料で会員になることができ、お寿司のコースを毎日無料で食べることができるというもの。サブスクリプション方式の店のなかでも、非常に変わったシステムを採用していることがわかるだろう。
“お寿司を通じて、人がつながっていくコミュニティ寿司”を目指すという「蓮華」は、2021年1月27日現在、会員は800人を突破し、とても盛況のようである。しかし、店舗の住所は東京・六本木にあること以外は非公開。さらに、会員制であることから、ホームページやSNSを見るだけではわからない、不明瞭な部分も多い。
そこで、実態はどういった店なのか、システムの詳細についても含め、「蓮華」のオーナーに話を聞いた。
ツイッターでバズったことがきっかけで会員数が一気に増加
まずは簡潔に「蓮華」がどういったお店なのか教えていただこう。
「基本スタイルは、相席をコンセプトにした居酒屋のように、お店にいる男女がランダムにマッチングされて相席し、一緒にお寿司を食べることができるシステムになっています。
我々の会社がもともと寿司屋を営んでいたこともありまして、”お寿司を食べながら、お客様のみなさまが仲良くなれるコミュニティをつくれないか”と考え始めたのが開店のきっかけです」(「蓮華」オーナー、以下同)
オープンして2カ月ほどで会員数が800人を突破するなど、破竹の勢いで顧客を増やしているが、人気の火がついたきっかけなどはあったのだろうか。
「はじめは知り合いの男性、女性を誘って会員を増やしていました。それが今年の1月中旬ぐらいにSNSに出したところ、ありがたいことにバズりまして、それを機に会員希望の方が一気に増えたんです」
サブスク方式採用のワケ
続いて、店のシステムについて聞いた。男性会員は会員料のほかにチャージ料が1000円かかり、ドリンク代も有料となるのだが、「毎日厳選鮨コース」を毎日無料で食べられるという。
「会員制・月額制は、昨今一般的になりつつあるサブスクリプション方式にヒントをもらいました。もともと、お寿司が持つ『高い料理』というイメージを変えたいという思いがあったんです。以前から寿司屋を営んでいた経験からお寿司の原価は大体わかるのですが、実は高級寿司屋と呼ばれるお店のなかには、その原価から考えて過剰に高価格で提供しているお店もあるんです。お寿司は、江戸時代では庶民が食べる大衆料理だったともいわれています。ですから、お寿司という料理のハードルを下げ、そして気楽に食べていただくために、サブスク方式を取り入れました」
月額5万5000円を安いと感じるか高いと感じるかは人それぞれだろうが、確かにサブスク方式なら最初に定額を払っている安心感で、気軽に食べに行くことができるだろう。オーナーにとって、サブスク方式が浸透している世相は好都合だったというわけか。
また、会員費の支払い方法については口座引き落としで、男性は入会から3カ月間は退会できないルールだという。
「当店に入会した方、全員に満足していただきたいため、そういったルールを設けました。というのも、たくさんいらっしゃる女性会員と仲良くしていただき、『蓮華』の魅力を十分に味わっていただくには、短い期間ではコミュニティに馴染みにくいからです。
『相席寿司』とは言うものの、なかには異性との交流だけではなく男性同士が顔なじみになって交友を広めている方もいらっしゃいますよ」
では、「毎日厳選鮨コース」のコース内容は、具体的にどんなものなのだろうか。
「築地で仕入れたネタを、基本的に毎日変えて出しています。はじめに先付けとなる一品料理の小鉢が各種3皿出て、そのあとに握り寿司が9貫、巻物1本、合計10個のお寿司が出ます」
毎日コース内容が変わるなら、飽きが来なくて行くのが楽しみだ。ちなみに、追加料理を食べる際は別途有料とのこと。
どんな方々が利用してる? 審査は厳しい?
ここから「蓮華」の実態に迫っていくが、同店を利用するお客は、どういった方が多いのだろうか。
「男性であれば、30代から40代が一番多く、会社経営者や医者、弁護士などがいらっしゃいます。サラリーマンであれば商社や不動産業界の方が多いですね。男性は入会審査があるのですが、それは主に反社やクレジットカードが使えない方を避ける目的で実施しています」
やはり男性会員は、一般的に富裕層と言われるような職業の方が多いようだ。
「女性は、主に大学生やOL、あとはモデルをやっている芸能関係の方も多いです。会員は男女問わず身分を明らかにしてから入会してもらっているので、芸能関係の仕事をしている女性でも安心して利用していただけます。
いわゆる”パパ活“を専門にしているような方も会員希望としていらっしゃるんですが、募集要項にも記載があるように、審査はかなり厳しくしています。ただ単に容姿端麗なだけではなくて、”男性に不快な思いをさせない”ような常識のある女性のみ入会を許していて、結果的には女性の入会率は大体3割程度に絞らせてもらっています。また、会員になった女性でも、素行が悪いとお店を出禁にせざるを得ない場合もあります。
ホームページには『容姿端麗』であることが条件と謳ってはいるものの、お顔に関しては必ずしもアイドルやモデルクラスの女性だけを採用しているというわけではありません。どちらかと言えば、前述したようなコミュニケーション力や常識の部分を重視しています」
男女ともに楽しめる空間をつくるために、そういった人選にも細心の注意を払っているようだ。
さて、相席で交流を図るだけではなく、男性は女性とのデートの際にも「蓮華」を利用できるという。
「男性会員とデートでいらしたお連れ様は、女性会員でなくても無料で『毎日厳選鮨コース』を召し上がっていただけます。ただし、その場合は女性会員と違ってドリンク代は負担していただきますので、その点だけあらかじめご了承ください」
デートの際に女性の寿司代が無料というのは、使い勝手が良いサービスである。現状はまだデート時の利用者は少ないようだが、増加の傾向にはあるという。
最後に、今後の展望について聞いた。
「今後はお寿司だけではなく、焼肉や焼き鳥、イタリアンなど多様なジャンルの交流型飲食店を、さまざまな場所に出店していけたらと考えております。『蓮華』の会員になることで、各地でさまざまな食を味わうことができ、なおかつ人とつながって大勢で楽しむことができるような、そういったコミュニティ形成の場をつくっていきたいです。
今はコロナ禍で、なかなか大勢の人が集まって食事をしにくい状況ですが、安心して暮らすことができる世の中に戻れば、こういった楽しい空間をもっと積極的に浸透させていきたいと思っております」
「蓮華」の魅力は、定額のサブスク方式で気兼ねなくお寿司が食べられるというだけでなく、それに加えて出会いの場と交流機会を増やせるという付加価値がついてくることにあるのだろう。
(文=二階堂銀河/A4studio)