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文藝春秋社長、図書館に「文庫本やめて」要望が波紋…図書館に人気本買わせる人への牽制か

文=日下部貴士/A4studio
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読みたい本を図書館に買わせるヘビーユーザーも

 次に、松井氏の要望について、文部科学省に見解を求めたところ、次のような回答を得られた。

「ニュースではセンセーショナルに書かれていますが、発言自体は提案ではなく、今後議論していきましょうという軽いものだったようです。日本図書協会としても提案とは受け止めておらず、文部科学省としてコメントさせていただくような段階ではないと考えています。今後、それぞれの立場から意見が出てくることは望ましいと考えていますので、お互いの業界がいいかたちになっていけばいいと思っています」

 世間では、松井氏が図書館側に要請したととらえられているが、あくまで意見のひとつだったようだ。前出の出版業界関係者も、「図書館側に向けてというよりは、利用者への牽制という意味合いが強い」との見解を述べる。

「そもそも図書館は、自治体の住民2〜3割程度しか利用しておらず、そのなかでも毎日、本を借りに来るのは数%です。さらに、本をリクエストしているのは、ほんの限られたヘビーユーザーでしかありません。そうしたごくごく一部の利用者が、さも自分の本棚のように、読みたい本を自分で買わずに図書館に購入させているという実態があるのです。特に今はネットで調べればどの図書館に何があるかわかる時代です。ヘビーユーザーのなかには、人気の書籍を複数の図書館で予約し、一番早いところから借りて読むという使い方をしている人がいます。松井氏は、このような人たちに向けて、遠回しに『廉価な文庫本くらいは自分で買ってください』と伝えたかったのだと思います」(前出・出版業界関係者)

 ネット上には、無料で読めるニュースやコンテンツが溢れるあまり、情報に対し金銭を支払うことに抵抗を感じる人が増えている。しかし、漫画や小説などの作者は、消費者に買ってもらうことで生計を立てているという事実を忘れてはならない。
(文=日下部貴士/A4studio)

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