日産自動車の10月の新車販売台数(軽自動車を含む)は2万2049台となり前年同月比で43.0%減となった。
国土交通省の出入り検査で、工場出荷前の完成検査に資格を持たない従業員が従事していたことが発覚。10月20日までに国内の6つの完成車工場で国内向け車両の生産と出荷を止めた。販売店への新規の車両供給をストップしたため、10月の登録車の販売は52.8%減の1万2745台と急減した。外部に生産を委託している軽自動車は出荷を続けたものの、ブランドイメージの低下から10月の販売台数は20.4%減の9304台へと落ち込んだ。
11月3日までに国内6つの完成車工場で再発防止策の導入を終え、順次、国交省の確認を受ける方針を示している。全6工場の生産が完全に軌道に乗る時期は見通せない。
国内向け車両の出荷停止は、部品メーカーにも影響が広がっている。日産と親密な部品大手、カルソニックカンセイの森谷弘史社長は10月26日、自社の生産停止に伴う休業補償費を日産に請求する方針を明らかにした。費用請求の方針を示した部品メーカーは同社が初めてだ。
日産系の最大手のディーラーである日産東京販売ホールディングスの酒井信也社長も11月2日の決算発表の席上、無資格検査に伴う販売減の補償について日産本体に請求する方針を示唆した。今後も追随する動きが出てくる可能性がある。
カルソニックは日産の追浜工場(神奈川県横須賀市)に自前の生産ラインを設け、計器板など運転席まわりの複合部品を組み立てて日産に供給している。追浜工場内では派遣社員などを含め340人のカルソニックの従業員が働いている。追浜工場が生産を中止したためカルソニックのラインも止まった。生産停止が長引けば、休業手当を支払って自宅待機させている従業員の人件費や機会損失の補償を日産に求めるという。
カルソニックは日産の国内工場に専用ラインを設け、売り上げの8割が日産グループ向けだ。日産の生産停止が長期化すると、経営への影響は避けられない。カルソニックは今年初めまで日産の子会社で東証1部に上場していた。
手切れ金をふんだくられたカルソニックカンセイ
「日産から独立すれば、他メーカーとの取引拡大など発展の余地がある。サプライヤーは強くあってほしい」
当時日産の社長だったカルロス・ゴーン氏(現会長)は、カルソニックを米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却することを決めた理由をこう説明した。