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総合商社、かつてない繁栄の時代へ…資源分野で巨額利益、「脱資源」論をあざ笑い

文=小川裕夫/フリーランスライター
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IT化進む資源開発の現場

 しかし、国内では敵なしの大手商社も、世界では無名な一日本企業でしかない。徒手空拳の大手商社が世界各地の権益を掌中に収める資源メジャーに対抗するのは至難の業だ。こうした構図から、資源は資源メジャーの言い値で取引されることが多く、「価格交渉は、商社の腕の見せ所」(同)だった。

 そうした資源メジャーに寡占化されている状態にも変化が生じつつある。資源を主力とする商社は、資源開発をできるだけ省力化するように日本の最先端技術を投入してきた。特に、日本の技術が効果を発揮したのが、鉱山や油田などで進む無人化だ。これまでの鉱山・油田開発の現場は人力への依存度が高かった。人件費がかかるため、資源価格はなかなか下がらなかった。

 2000年代から、鉱山・油田開発にもIT技術が積極的に導入されるようになる。そのため、今や鉱山や油田開発の現場は「過酷な労働環境という雰囲気はない。肉体労働というイメージも湧かないかもしれない」(同)といわれるほど、ITによる遠隔操作でほとんどのオペレーションが完了するようになっている。IT技術により省力化・無人化を達成したことで、日本の商社は資源を安く買い付けられるようになった。

 さらに価格を引き下げる役割を担ったのが、日本の鉄道技術だ。鉱山の事業所内はITの遠隔操作により無人トラックがひっきりなしに走っているが、事業所外で無人のトラックは走れない。ヤードまで無人トラックで運ばれた資源は、再び人間が運転するトラックに積み替えられて港まで運ばれる。

 ここから海外に輸出されるわけだが、鉱山から港までは近くても300~500キロメートルもある。鉱山と積出港の往復には時間を要する。有人トラックで港まで運搬する作業は、鉱山業のなかでも非効率的であり、輸送するトラック運転手の人件費は削減できないというのが定説になっていた。

商社限界論を一蹴

 しかし、こうした状況を打破したのが、日本が世界に誇る鉄道技術だった。鉱山から貨物鉄道を建設することでダイレクトに輸出港まで運搬する。鉄道輸送ならトラックの数十倍の資源を簡単に運ぶことが可能だ。効率的な輸送は人件費削減にもつながり、資源の卸価格も安くなる。

 こうして日本の商社が権益を握る鉱山では鉱山開発・鉄道建設・港湾整備の3点に包括的に着手することが計画され、商社はこぞって鉱山開発への投資を加速させた。商社関係者たちも、資源系の存在感が再び大きくなりつつある状況について「インフラ整備への先行投資が結実したからだ」と胸を張る。

 2000年代に入って以降、商社は「資源一本槍では苦しい」「資源に依らない多角化が必要」という商社限界論・商社不要論が蔓延していた。

 長期的な視点に立てば、非資源分野の開拓は不可避だろう。しかし、いまだ石油・石炭・天然ガス・鉄鉱石などの資源の需要は高い。ここにきて、再び商社は経済界での存在感を大きくしつつある。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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