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在宅勤務制度を導入しているIT企業の人事課長は、こう指摘する。
「利用が進まないのは本人より上司が積極的に認めようとしないからだ。上司にとっては部下が見えないところで仕事をしているのが不安でしょうがない。在宅で仕事ができるのはわかっていても、自分の視野から消えるのが怖いと感じている上司が多い」
職場では常に部下の仕事ぶりを観察し、何かあれば報・連・相を通じてコミュニケーションをとることが習い性になっている“昭和的”上司も多いのだろう。
3番目はテレワークが生産性向上につながるのか疑問視している企業が多いことだ。大手医療機器メーカーの人事担当役員は、その理由についてこう語る。
「テレワークの要諦は生産性の向上にある。だが多くは育児中の社員のためのベネフィットになりがちで、そうなると生産性は置いていかれる。もう1つは離れたところで仕事をしている社員の成果を上司がちゃんと評価してあげることが肝になる。だが、目の前にいる部下の成果をちゃんと評価できないような上司も多く、目の前にいない人の評価をちゃんとできるとは思えない。評価をまともにできない上司がいる限り、テレワークの導入は時期尚早と考えている」
生産性向上や個人の成果を促すのであれば、在宅で行う仕事の切り出しや進捗状況をチェックし、会社にいる人と同じように適正に評価して組織全体のパフォーマンスを上げることが重要になる。そのための仕事の仕組みや方法論がない状況で、単にICTの機器やサテライトオフィスを提供しても生産性が上がるとは思えない。
政府は2020年にテレワーク制度導入企業34.5%、雇用型テレワーカー15.4%の達成を目指している。だが、いくらテレワーク推進ムードが盛り上がっても“笛吹けど踊らず”の状態になりかねない。
(文=溝上憲文/労働ジャーナリスト)
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