――具体的には、どのような施策でしょうか。
中村 クルマには個別に識別するための車台番号が付与されています。広告には、その車台番号を入れることを義務化し、入力しなければ広告掲載されないフローを確立しました。また、契約成立後はすぐに非公開にするオペレーションを構築しました。
――広告が減れば、「カーセンサー」の広告収入も減ってしまうのではないでしょうか。
中村 逆にいえば、収入を落とさないと中古車業界の浄化は図れなかったといえます。実際、「カーセンサー」はページ数が減って薄くなりました。
たとえば、ある販売店は広告をいつも20ページ載せていましたが、車台番号を表示させた結果、10ページに減少したとします。しかし、広告の掲載量が減ると「あそこは業績が悪化しているのではないか」などという噂にもつながります。販売店はそうした評判を嫌うため、正確な情報で広告出稿を行うようになりました。そして、次第に業界が健全化していったという経緯があります。
「カーセンサー」の改革で「おとり広告」を排除
――中古車業界には、若いときに“やんちゃ”していた方も少なくないイメージがあります。ずいぶん、神経を使ったのではないですか。
中村 やはり、クライアントの方にご理解いただくことに一番力を注ぎました。販売店からすれば、「おとり広告」の排除によってカスタマーからの問い合わせが減るなど、自分たちの利益が削られることに直結します。ひとつのビジネスモデルとして成立している以上、彼らもおいそれと許すことはできなかったのでしょう。
ただ、業界を健全化し、カスタマーに正しい情報を伝えて透明性を高めていくことが、カスタマーが安心してクルマを購入することにつながります。そして、中古車市場を活性化するためにも大事なことです。そういうことを伝えていきました。
「カーセンサー」はリクルートグループの一員として、日本中古自動車販売協会連合会と共に中古車業界の透明化を図ってきました。「カスタマーに対して誠実であるべき」という信念を持ったメディアだからこそ、乗り越えられた難関だと思っています。
――それ以降、「おとり広告」はどうなりましたか。
中村 ほぼなくなったと自負しています。