もし、携帯電話事業に失敗したら、三木谷氏は楽天の持ち株を手放し、オーナーの座を降りることもあり得る。妻の三木谷晴子氏(第3位の大株主)の持ち株すらもどうなるかわからない。
金融筋によると、「銀行からの借り入れなどファイナンス業務はゴールドマン・サックスが担うとの見方がある」という。楽天のメインバンクであるみずほ銀行はソフトバンクに巨額の融資を行っており、ソフトバンクと一蓮托生の関係だ。孫氏の意向を“忖度”して、楽天の融資団には加わらないのではないかと推測するアナリストもいる。
永田町では、三木谷氏が安倍晋三首相の周辺に「携帯電話事業へ本格参入」の意向を伝えているとの情報が広まっている。本当であれば、「非公式の支援要請」をしたということか。
新しくつくる会社の出資には、ソニーの平井一夫社長、パソナグループの南部靖之社長、サイバーエージェントの藤田晋社長、GMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長などが前向きで興味を示していると伝わってきている。三木谷氏が主宰する新経済連盟のメンバーにも出資を呼びかけることになるだろう。首相官邸に話を通しているのであれば、安倍首相の“お友達”の新興企業の経営者が資金を出す可能性もある。
菅義偉官房長官は17年12月14日の記者会見で、楽天の携帯電話事業参入に関して、「公平で公正な競争を通じ、利用者にプラスになるような料金、サービスを実現することを期待したい」と述べた。
新経連は、代表理事が三木谷氏で、副代表理事が藤田氏だ。幹事で興味を示しそうなのは増田宗昭・カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)社長兼CEOぐらいとみられている。林野宏クレディセゾン社長、野本弘文・東京急行電鉄社長は、第4の携帯電話会社のリスクは大きすぎるとして協力には消極的なようだ。
ソニーは17年12月7日、スマートウォッチを発売した。スマートフォンとスマートウォッチをひとつの電話番号で使えるようにするためには、通信会社の協力が絶対に必要だ。ソニーが楽天の携帯電話会社に出資する素地は十分にある。
GMOはスタートアップ企業に投資、新規上場させてリターンを得るビジネスだが、楽天の電話会社に出資してリターンを得る手段はあるのだろうか。第4の携帯電話会社を上場させる方針を示せば出資する可能性も出てくるかもしれないが、否定的な見解も多い。金融筋によると、ファンドも事業会社も楽天の電話会社への出資には腰が引けているのが実情だという。