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小笠原泰『日本は大丈夫か』

相次ぐ企業の不正でも事故は起きていない…日本企業にコンプライアンスは馴染まないのか

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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相次ぐ企業の不正でも事故は起きていない…日本企業にコンプライアンスは馴染まないのかの画像1「Thinkstock」より

 日産自動車の無資格者による完成検査と神戸製鋼所の検査データ改ざんにはじまり、SUBARU(スバル)、三菱マテリアル子会社の三菱電線工業、東レ子会社の東レハイブリッドコード)と続く、日本企業の品質管理問題は、三菱電線と東レハイブリッドの社長辞任にまで発展している。これら不正行為が30~40年前から行われていたということを考えると、問題の根は深く、今後も他社で同様の品質管理問題が発覚してもおかしくはない。

 マスコミは「日本のものづくり品質の危機」「日本の現場力の疲弊」といった表現を使う。基本的に「がんばる現場」に対して、過度なコスト削減や生産性向上などのプレッシャーをかけてコンプライアンス(法令・規則遵守)を蔑ろにさせるマネジメントが悪いという論調だ。それも事実ではあるが、一連の問題は、日本的組織の成り立ちと昨今急速に重視されるようになったコンプライアンスに対する認識に関わるものであるといえる。

 コントロール(実質支配力)と権威(支配権)を分ける傾向の強い日本的組織において、下部は上部に対してコントロールを有し、上部は下部に対して権威を有するかたちをとる。つまり最上部は下部に対する権威のみ、最下部は上部に対するコントロールのみを有するという組織構造になる。組織を支える下部構造(最下部)としての現場は、上部組織に対して大きなコントロール力を有するのである。これは、一般に「強い現場」とか「現場力」と呼ばれている。アメリカ的組織のように各組織階層が下部組織に対してコントロールと権威を合わせもってパワー(権力)を行使するのとは大きく異なる。

 また、アメリカ的組織のように変化に対して制度を変えて適応する(意思決定主導)のと異なり、日本的組織では、ゆるい制度とその解釈運用で変化に対応する(インプリメンテーション主導)という特徴がある。現場での運用の自由度の高さは、現場の主体性と自律性を意味する。これが、日本的組織の強みといわれるものである。この現場の主体性と自律性が品質と組み合わさったのが、世界を席巻した日本品質を生み出したQCサークルなどの「終わることのない」カイゼン運動である。

コンプライアンスとカイゼン

 主体性と自律性を有する現場の常識は、裁量と改善という努力と工夫こそが良いもの、良い品質を生むという認識である。法令により固定化された手続きであるコンプライアンスは品質を担保するという意味で信用されていないのであろう。コンプライアンスという概念が導入されるはるか前からカイゼンで勝負しているのであるから、当然と言えば当然だ。

 今回の騒動でマネジメントは、現場の現状を把握できていなかったともいわれるが、品質問題が起きなければ、マネジメントとしても問題はないという認識であろう。つまり、マネジメントもコンプライアンスは脇に置いて、安全性に問題がなければ「問題ない」という認識なのだ。

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