パナソニックがトヨタを戦略パートナーとする理由
家電から自動車へ――。津賀社長は電気自動車向けのリチウムイオン電池に社運を賭ける。
17年12月13日、パナソニックとトヨタ自動車は、電気自動車(EV)などの基幹部品である電池事業で協業を検討すると発表した。リチウムイオン電池の開発で手を組むことになる。さらに、トヨタが20年前半までの実用化を目指す次世代電池、全固体電池の共同開発も検討する。
独フォルクスワーゲン(VW)を筆頭に、世界の自動車メーカーは次々にEVの販売計画を打ち出した。だが、日本勢は「リーフ」で先行する日産自動車を除き、商品化で出遅れた。
トヨタの豊田章男社長は12月13日の記者会見で、「車の電動化のカギとなるのは電池だ。競争力のある電池を開発して、安定供給することが重要」と語った。競争力のあるパートナーとしてパナソニックを選んだということだ。
リチウム電池は高出力、大容量が特徴。スマートフォン(スマホ)やノートパソコンなど情報機器の電源として需要が急拡大してきた。1991年にソニーが実用化して以来、日本勢の独壇場だったが、ここへきて中韓のメーカーが追い上げてきた。
リチウムイオン電池の世界シェアはパナソニックが22.8%でトップ。2位が韓国サムスンSDIの20.8%、3位が韓国LG化学の14.0%(2016年、テクノ・システム・リサーチ調べ)。
ここへきてスマホやパソコンの需要拡大のペースが鈍化。EVや電動工具、電動自転車、ドローン(小型無人機)など、モーターを動かす電源として需要が増えている。
パナソニックが成長の柱に据えるのは、EV向けリチウムイオン電池である。最大の顧客はEVベンチャーの米テスラ。テスラとパナソニックは11年、電池供給のパートナー契約を締結した。
テスラは17年7月、価格をそれまでの車種の半額となる3万5000ドル(約390万円)に抑えたEVの「モデル3」を発売した。すでに50万台分の受注があり、EVの本格的な普及につながると注目されている車だが、立ち上げ段階で苦戦を強いられている。
17年1月、テスラは6000億円を投じた世界最大の車載電池工場「ギガファクトリー」(ネバダ州)の稼働を始めた。これにパナソニックは2000億円弱を負担した。モデル3向けに乾電池サイズのリチウムイオン電池を生産している。