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これに対してもちろん元店主は、「押し紙」を断ったと主張している。その証拠として裁判所に提出しているのが、元店主が保管していた毎日新聞社との交渉を録音したCDである。元店主は開業直後から、多量の「押し紙」が搬入されることに面食らい、係争になることを予測して、初期から交渉のたびに会話を録音していたのだ。その量は膨大になる。
たとえば15年7月31日の録音は毎日新聞社側との交渉記録である。次のような元店主の発言がある。()内は筆者による注釈である。
「○○担当が(新聞を)200(部)切ったって言ってますけど、それでも1000(部)以上余っているんですよ、だからここを根本的に直してもらわないと、きついですよ、こんだけ紙が余っていると」
毎日新聞社の担当員がある時期に搬入部数を200部だけは減らしてくれたが、それでもまた1000部の新聞が「押し紙」になっているので、経営が厳しいと必死に訴えているのである。元店主が過剰になっている部数を減らすように交渉していた証拠である。
裁判は今春にも結審する見込みだが、これまでの毎日新聞社の「押し紙」裁判とは異なり、和解ではなく、判決が下る可能性も若干ある。もし仮に判決により毎日新聞社の「押し紙」が認定された場合、それが判例となるので、新聞業界全体に与える影響ははかり知れない。
(文=黒薮哲哉/「メディア黒書」主宰者)
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