楽天がアマゾンに敗れたことは、如実に数字に現れた。楽天の17年7~9月期の連結決算は、楽天市場や楽天トラベルなど国内のネット販売事業の営業利益が前年同期比6.7%減の193億円にとどまった。一方、楽天銀行、楽天カード、楽天証券、楽天生命保険など金融事業の営業利益は同15.7%増の180億円。得意のITを使った金融サービス(フィンテック)は好調だが、看板の楽天市場は苦戦しているという実態が浮き彫りになった。
16年の個人向けECの国内市場規模は約15兆円で、15年比で約1割拡大した。なかでもスマートフォン(スマホ)を通じてネット通販を利用する人が増えた。ところが、ネット通販の日本における先駆者である楽天市場は、その波に乗れなかった。
携帯電話参入で株価急落
楽天市場は、どの商品を売るかといった判断や、配送すべてを出店企業に任せきりにする「モール型」だ。アマゾンは「直販型」のため、商品の取捨選択や価格の設定、配送などを自社の判断で決められる。経営のスピードで楽天はアマゾンに見劣りする。その点が、アマゾンに逆転を許した大きな原因と考えられる。
そのためか、三木谷浩史会長兼社長は1月30日、自社のインターネット通販で「独自の配送ネットワークを2年で構築する」方針を明らかにした。自社の物流施設から直接、商品を届けるほか、駅のロッカーや郵便局でも荷物を受け取れるようにする。楽天が自前の倉庫で出店者の商品を保管して配送することで、アマゾンに後れをとってきた配送のスピード・アップにつなげる。
楽天の強みは、金融分野を含めて幅広く楽天ポイントで顧客を囲い込む「楽天経済圏」を形成していることだった。
ところが、ここ数年、同様の戦略を掲げる企業が次々と登場してきた。アマゾンは通販利用者の登録情報を活用した決済システムを日本でも18年以降に始めると表明している。
携帯電話事業も損害保険も、規制に縛られている分野だ。新参者に競争環境を変える可能性があると同時に、大きなリスクもある。特に携帯電話事業は毎年、巨額の資金(投資)が必要となる。携帯電話への参入を公表して以降、楽天の株価は大きく下がった。
朝日火災の買収が明らかになった1月29日も、楽天の株価は朝方こそ上昇したものの、その後は伸び悩んだ。株価の推移を見てみると、1月18日の株価は昨年来安値の952円に沈み、その後も1000円を挟んで一進一退を続けている。
三木谷氏の経営のキーワードは「スピード」だが、次々と打ち上げた仕掛け花火は、拙速の感を免れない。そのため、笛吹けど株価は踊らず。オーナーの焦りが楽天の株価に投影しているのかもしれない。
(文=編集部)