高価格帯化粧品とインバウンドが売り上げ・利益を牽引
サプライズをもたらしたキーワードは3つ。高価格帯の化粧品、インバウンド(訪日外国人観光客)、そしてドナルド・トランプ米大統領だ。別の言葉でいえば、プレステージブランド、ボーダレスマーケティング、そして米国の税制改正となる。
プレステージブランド、ボーダレスマーケティングとも、魚谷氏がもっとも得意とするところだ。プレステージブランドとは、購入することが地位の高さを証明すると認められるような高価格帯戦略をいう。一方、ボーダレスマーケティングとは、インターネットの普及により国境の壁をなくして売り込む戦略を指す。
プレステージブランドでは、「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポーポーテ」といった高価格帯の化粧品に注力した。17年12月期の増収額1548億円のうち、プレステージは42%の653億円を占めた。
日本国内の売上高は前期比13.1%の4310億円。このうちプレステージは同35.8%増の913億円。営業利益は同47.6%増の832億円。営業利益率は18.0%と、同3.9ポイント向上した。インバウンド売り上げも大きく伸びた。585億円で同70%増。インバウンド分は国内売り上げの13.6%に相当する。
中国人観光客に焦点を当て、日本でプレステージ化粧品を手にとってもらい、帰国後、中国で購入してもらうというのがボーダレスマーケティング。これが功を奏した。中国事業の売り上げは20.1%増の1443億円。このうちプレステージは実に58.4%増の553億円に達した。営業利益は3.1倍の113億円。営業利益率は7.8%と4.7ポイント改善した。
米税制改正でベアエッセンシャルの665億円の減損処理を吸収
好業績を背景に、魚谷氏は永年の懸案である“負の遺産”の処理に踏み切った。
資生堂は17年11月1日、米子会社ベアエッセンシャルののれん代などの減損損失655億円を計上すると発表した。巨額な減損処理で、17年12月期の最終利益の予想を50億円に引き下げた。最終損益の赤字転落をかろうじて免れる水準だった。
ところが、蓋を開けてみたら最終利益は227億円。従来予想を177億円上回った。17年12月期決算の最大のサプライズとなった。
ここでトランプ大統領が登場する。選挙公約であった連邦法人税率を35%から21%に引き下げる税制改革法案が17年12月20日に米議会で可決された。米国の税制改正は、米国に進出している日本企業の最終利益を押し上げた。トヨタ自動車は2919億円、本田技研工業(ホンダ)は3461億円増加した。資生堂も同様だ。“トランプ効果”といえる。
ベア社を含めた米国事業の17年12月期の売り上げは10.1%増の1404億円だが、営業損益段階で103億円の赤字。前年の128億円の赤字から赤字幅は若干、縮小したが、依然として水面下にある。