――個人の篤志家なら、そのほうがいい場合もあるでしょう。たとえば私が毎年出す年賀状の数は200枚台ですが、個人が世界地図を5,000枚もらってしまったら始末に困ります。個人の方を巻き込むなら、むしろ枚数を減らしたほうがいいでしょう。
松岡 私は、世界に井戸を、綺麗な水をということで、その手段として世界地図ビジネスを始めたのですが、世界地図ビジネスを展開していくうちに、この商材でさらに大きな夢を追えることに気がつきました。
坂本龍馬が地球儀を見せられて自らの蒙を啓かれた、という話があります。子供たちに世界地図を見てもらい、自分の国だけではなく世界のことを知ってもらう、俯瞰してもらう。それによって、自分たちの国や地域で起きている紛争や戦争の愚かさに気がつくことになる。
ノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんは「1冊の本で世界を変えられる」と言いました。私は世界地図もそんな力を持っていると思います。イラクやシリア、またアルカイダの子供たちが世界地図を見て、「お父さん、戦争なんかやめよう」ということが起きればいいなと願っています。
――御社のリーフレットには、「世界地図は世界を救う」「もう戦争なんてやめよう!」という見出しがあります。すばらしいですね。
松岡 これらの実現を目指して、私は世界地図ビジネスを一生展開しようと思っています。
――商品としての世界地図ですが、いろいろなバージョンの企画やデザインは、どのように行っているのですか。
松岡 デザインや印刷は外部に委託します。各国の国境の表示は、その時現在での日本の外務省の表示を採用しています。各国の指標資料など、アカデミックな内容のチェックは専門家に委託して間違いのないように努めています。商品の企画も実質的に私だけでやっていますが、現在の悩みは販路開拓です。
――松岡代表は前職の時代からボランティアや社会貢献に尽力なさってきましたが、どのような経緯でそのようなことに関心をもたれたのですか。
松岡 月光仮面です。子供のときにテレビで見たヒーローです。「世のため、人のため」ということに強く憧れてきました。
――74歳でいらっしゃいますが、後継者は?
松岡 それがまた頭痛の種です。次男に期待したのですが、受けてもらえなくて。誰か後継者はいませんか。
――すばらしい事業・運動を展開なさっているので、ぜひ継続・発展を図ってください。本日はどうもありがとうございました。
松岡 ありがとうございました。
対談を終えて 山田の感想
第三世界に井戸を掘るためにビジネスを始めた、この1点で松岡代表は世界に2人といない経営者であり、篤志家だ。この、青年のようなというか青年にも滅多に見られない理想家の快男児、松岡代表に私はいくつか助言をさしあげた。
ひとつ目は、世界地図を販売した利益で井戸を掘るというビジネスモデルを逆にして、まず寄付を求めて、そのお礼に世界地図を進呈するというパターンも検討したら、ということである。
2つ目は、日本以外で壁貼り型の世界地図はあまり普及していないということ。それなら外国語版世界地図の海外販売ということだろう。そのためには、ホームページからのインターネット販売が一番手っ取り早い。英語バージョンのECを早急に立ち上げたらどうか。読者のなかで篤志家やボランティアの方がいれば、ぜひ連絡を取ってみてほしい。
3つ目は、販売している世界地図の裏側を活用すること。現在は白紙だが、そこに発注の方法やら、井戸の寄付のこと、実績などをデフォルトで刷り込んでしまうことをお勧めした。
理想に燃える松岡代表に私は打たれた。ぜひ、井戸寄贈プロジェクトが大きく展開されることを祈っている。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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本連載記事で山田修と対談して、業容や戦略、事業拡大の志を披露してくださる経営者の方を募集します。
・急成長している
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・大きな志を抱いている
・創業時などでの困難を乗り越えて発展フェーズにある
などに該当する企業の経営者の方が対象です。
ご希望の向きは山田修( yamadao@eva.hi-ho.ne.jp )まで直接ご連絡ください。
選考させてもらいますのでご了承ください。