ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 安い・便利・安全なウーバー  > 2ページ目
NEW

安い・便利・安全なウーバー、日本では「うまくいかない」理由

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

ウーバーのメリット

安い・便利・安全なウーバー、日本では「うまくいかない」理由の画像2『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』(大﨑孝徳/日本実業出版社)

 こうしたウーバーのメリットについて、ドライバー、利用者の両面から見ていきましょう。

 まず、ドライバーは自分の好きな時間にお金を稼ぐことができます。また、現在所有する自分の自動車を活用できるため、設備投資の必要がありません。

 一方、利用者の立場に立てば、タクシーよりも安く利用できます。具体的にアメリカでは2~3割安いようです。そもそも、アメリカやヨーロッパなどではタクシーをつかまえるのにも大変苦労する街が少なくないので、大変便利です。

 このように、先進国においては価格の安さ(+便利さ)が注目されがちですが、東南アジアなどの新興国では、ほかにも多くのメリットがあります。たとえば、筆者はフィリピンでウーバーを利用したことがあります。飲み会の解散が遅くなったため、現地の方が私のために呼んでくれたのです。

 フィリピンに限らず、多くの新興国におけるタクシーは古い、汚いという場合が極めて多いです。また、ドライバーによって顧客対応の良し悪しの差が激しく、ひどい場合は遠回りをされる、スピードメーターが早く上がるなどにより、必要以上の金額を払わされるといった詐欺的な事案もよく耳にします。

 さらには、人気のないところに連れていかれ、お金を盗られたり、それ以上の犯罪も日本に比べれば断然起こる可能性が高いのです。

 しかしながら、ウーバーではこうした問題がかなり生じにくくなります。なぜなら、まず登録されたドライバーに予約するというシステムにより、ドライバーの身元がはっきりしています。さらに、過去の乗客の各ドライバーおよびその自動車に対する評価を確認したうえで予約を行うことができるため、客は条件の良いドライバーや自動車を選べます。

 逆に、各ドライバーは客の評価が記録に残るため、接客などには細心の注意を払い、自動車も常にきれいにしています。そうでなければ誰も予約してくれないからです。金額は予約時に確定済みのため、遠回りされるといった心配もありません。さらに、私の乗った自動車の場合、カーナビのようにスマホに地図とルートが示され、そのルートを順調に進んでいることが後部座席からも確認できるため、どこか怪しいところに連れていかれるリスクも低くなります。

 つまり、こうした新興国において、ウーバーは利用者に安全や快適さを与えているわけです。

 もっとも、フィリピンではウーバーは法的にグレーゾーンらしく、このままサービスを続けさせるべきかといった議論が、毎日のようにテレビ番組で取り上げられていました。

 また、日本では、過疎地での試験的運用などの例外を除けば、法律上認められないため、ウーバーはタクシー業者と連携し、利用者からの予約を請け負い、タクシー会社に紹介するといったサービスを展開していますが、ビジネスとしては現在のところ、うまくいっていないといえるでしょう。

 今後、日本でも法律が改正されウーバーのようなサービスが普及するのか、興味深いところです。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』 プレミアム商品やサービスを誰よりも知り尽くす気鋭のマーケティング研究者が、「マーケティング=高く売ること」という持論に基づき、高く売るための原理原則としてのマーケティングの基礎理論、その応用法、さらにはその裏を行く方法論を明快に整理して、かつ豊富な事例を交えて解説します。 amazon_associate_logo.jpg

安い・便利・安全なウーバー、日本では「うまくいかない」理由のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!