アスクルとロハコ、アマゾン凌駕の物流ロボット化で秒単位予測…ドライバーをラクな仕事に
EC(電子商取引)の普及に伴い、「物流危機」がいわれる。2010年度に約32億個だった国内の宅配便取扱個数は、16年度には40億個を超えた。宅配最大手のヤマト運輸は昨年、27年ぶりに個人向け宅配の基本料金を値上げした。
労働人口減少の深刻化に加え、ECのさらなる普及が見込まれるなか、それを支える効率的な物流網は、ECプレーヤーの競争力にかかわってくる。「物流を制するものがECを制する」といわれる所以である。
アスクルは、B2Bビジネスの「アスクル」に加え、個人通販の「ロハコ」によって個人宅への宅配も行う。その6割以上が自社配送だ。「物流危機」に、いかに対応していくのか。社長の岩田彰一郎氏に、取り組みの最前線を聞いた。
世界最先端のピッキングロボット
片山修(以下、片山) 昨年は、「宅配クライシス」とか「物流危機」が大きく取り上げられました。ECの普及によって、荷物の数は増える一方、労働人口減少社会で人手不足は深刻化する。この問題を解決するのは、やはり、ロボットやビッグデータ、AI(人工知能)などの先進技術しかないのではないかと思います。
岩田氏(以下、岩田) 流通業や物流業は、おっしゃる通り、IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、AI、ロボットなどが、すべて絡む業界です。これまで私は、「世界は同時に動いている」という表現を何年も使ってきましたが、近年、AIをはじめとする産業革命が迫るなかで、今年の年頭の挨拶では、その表現を「世界は同時に走り始めた」に、変えました。つまり、AIやロボットなどの変化が一気にくる。この革命をどう乗り切り、次のモデルに変化していくかは、いまの私の最大の関心事です。毎日朝から晩まで、そんな話をしています。
片山 製造業やサービス業などの業種にかかわらず、いま、大企業のトップと話をすると、みな、100年に一度ともいわれる大変革をいかに生き残るか、そのためにビジネスモデルをいかにチェンジするか、必死になっていますよね。
岩田 AIやEV(電気自動車)のような大きな変化は、産業構造を変えるという意味で国家間競争になります。米国、中国、ロシアなどは、この変革のなかで力を持とうと動き回っている。日本も国家戦略としてテクノロジーの進化に本気で取り組まないといけないと思います。
私は、07年頃から「ITイノベーション産業」を提唱しているんです。簡単にいうと、すべての産業はイノベーション産業へと変化しないと、日本は諸外国に太刀打ちできないということです。