決して“好調”とは言えない両社の経営実態
「現在のaiwaについてはまだ売り上げデータが出ていないため、いわばビジネスのスタート地点に立った段階。好調とも不調とも分析できる状態ではありません。
そしてVAIOですが、新しい製品を出せるようになってきたことは事実です。しかし、黒字転換したというだけで“業績が良い”わけではなく、ソニー時代に比べて規模は10分の1程度に縮小しているため、当然製品のバリエーションはとても少なくなっています。ストレートに言えば、再建途上でようやくトントンになりつつあるというだけで、現在のVAIOの経営状況がうまくいっているかというと、決してそうではないのです。
企業は営業利益が大幅な黒字になって初めて好調といえます。現在のVAIOはあくまで企業として健全になったというレベルにすぎません。VAIOが好調といえるようになるのは、独自のビジネスを展開できる段階になったときでしょう」(西田氏)
では、ソニーはなぜaiwaとVAIOを切り離したのか。
「一口に切り離されたと言っても、aiwaとVAIOではずいぶんと状況が違います。aiwaがソニーのグループ会社であった1980年代から90年代は、家電がたくさん売れていた時代であり、当時のaiwaは安価で高品質な製品を売ることに定評がありました。ですからソニーはaiwaという小規模ながらも手堅く利益を収めていた企業をグループ内に所有することで、経営を有利に進めていたのではないでしょうか。
しかし、2000年以降は状況が一変。ライバル企業も増えたうえ、ソニーも自社で安価な製品を売り出すようになりました。そのため安価な製品を売るためにわざわざaiwaをグループ内で所有する必要がなくなったわけです。くわえてaiwaの収益も悪化していました。そこでソニーは、aiwaというブランドを畳んだほうがいいだろうと2008年に判断を下したわけです」(同)
現在のaiwaの製品は昔のイメージのような安価な価格設定ではなく、過去のaiwa製品に比べるとかなり高めに設定されているという。aiwaブランドであることに変わりはないが、当時と現在ではビジネスモデル自体を抜本的に変えてきているのだろう。