消費者が企業活動に抱く疑問を考察するサイト ビジネスジャーナル ⁄ Business Journal
そこでこの脱税会社は、取引先に1900万円ほど支払って架空の見積書や請求書を作成してもらったのです。そして、すごく虫のいい話なのですが、社長は脱税がバレた後に、この脱税の協力金は会社の経費になるはずだと主張したのです。実は、このような脱税協力金は経費にしない、という法律はこのときには存在しませんでした。
法人税法では、経費について「損金の額に算入すべき金額は、売上原価等の原価の額、販売費、一般管理費その他の費用の額、損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとし、これらの額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるもの」としています。架空の経費は「事実と異なる処理」なので、「公正妥当な会計処理」ではありません。また、脱税協力金は、脱税に協力したことへのお礼であって、やはり「公正妥当な会計処理」いわゆる「公正処理基準」に反して法人税を圧縮するための支払いなので、経費にできないと判断されました。
一見、誰もが「そんなもの認められるはずないだろう」と思うようなことでも、法律の条文を用いて理由付けをしてしっかりと否定しなければいけないのです。明文化されていない部分を納税者がついたという点で、賢くもあり、自分勝手な事件でした。
ちなみに、この事件の後、法律が改正され「不正行為等に係る費用等の損金不算入」に関する条文が追加され、同様のケースがあっても、税務調査の段階で完膚なきまでに論破されることになりました。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)
Business news pick up
RANKING
23:30更新関連記事
2024.11.21 18:05
2024.11.21 18:00
2024.11.20 22:21
2024.11.20 20:41