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同時に、世界の製薬業界では、がん治療薬や神経関連の疾患の治療薬など、従来以上に研究開発分野の重要性が高まっている。買収を通して特許切れによる売り上げ減少などの影響を回避しようとする経営戦略は重要だ。内部での研究体制と、外部からのコアコンピタンスの取り込みのバランスを考えると、武田の経営戦略は後者に傾注している。
買収による成長力の限界
現時点で武田は海外の買収を成長のドライバーに位置付けており、今後も大型の買収が検討、実行されていく可能性は相応にある。
ただし、武田が世界のトップクラスの製薬企業を目指すのであれば、これまでの発想と取り組みでは不十分だろう。世界の製薬企業の収益ランキングを見ると、最大手ロシュの売上高は約6兆円、これに対して武田は1.7兆円程度と3倍以上の差がある。ロシュの研究開発費が1.3兆円程度であるのに対し、武田は3000億円程度にとどまる。規模の面から考えると、武田が自社と同等規模の企業を数回買収して初めて、世界のトップクラスの製薬メーカーの仲間入りを果たすことができるということになる。
それを実行していくことは、困難だろう。大型の買収を仕掛けようとすればするほど、社債の発行などを通した資金調達が増加し、財務の悪化懸念が高まる。そのなかで、自己資本の拡充が目指されれば、既存株主の権利が希薄化するとの懸念も発生する。
買収を重視しているのは武田だけではない。昨年12月、スイスのロシュはがん治療薬の開発に取り組む米製薬企業イグナイタを約1900億円で買収した。2016年のイグナイタの売上高はゼロだ。新薬への期待からロシュは基準となる株価に対して7割超のプレミアム(買収プレミアム、経営権を握れるだけの株式を取得するために、市場で取引されている水準を上回る買い取り価格を提示すること)を支払った。
売り上げがない企業でも潜在的な創薬への期待があるのであれば、買収する。それが、製薬業界の常識になっている。ひとたび買収に失敗し業績が悪化した場合には、その企業が買収候補として扱われることも十分に考えられる。買収をメインの成長戦略とする経営には限界がある。
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