「POPに描く内容を工夫したり、おもしろさを重視した店内放送を流してみたりと、さまざまな施策を試みて集客につなげている店がたくさんあります。大阪のスーパーには、レジ担当にお客さんとコミュニュケーションを取らせて、レジに固定客をつくるように指導している店も多いですよ」(同)
ちなみに、ここでいう「コミュニケーション」とは世間話ではなく、料理のレシピなど地域の買い物客にとって有益な情報を与えること。そうしたコミュニケーションができなければ固定客がつかないため、地方の個店主義のスーパーでは、レジ担当がより多くのレシピを知っておく必要があるそうだ。
こうした手法は、レジ担当に回転率を上げることを求める大手スーパーでは難しい。
「地方のスーパーには、『近所のおばちゃんが何を食べているのかがわからなくなったら、商売ではない』という信念の下で、あえて店舗数を拡大しない経営者もいます。客の取り合いが熾烈を極める地方のスーパーには、生き残るための“答え”を持っている店が多いんです」(同)
昨年、イオンの総合スーパー部門は既存店売上高が業界平均を下回るなど、その不振ぶりが報じられた。これが意味するのは、もはや本社が主導する従来型の経営ではスーパーの集客は難しいということではないだろうか。その先にあるのは、さらに熾烈化するスーパー同士の生き残りを懸けた争いである。
今野氏は、こうした地方のスーパーのレジ担当のコミュニケーションを「みらべるも取り入れるべき」と提言する。
「今、スーパーが生き残るために必要なのは『楽しく買い物をしてもらう仕掛け』です。毎日行くスーパーがつまらない場所では、どれだけ値段が安くても行かなくなってしまいます。みらべるも一部の店舗では導入しているようですが、POPにレシピや食材の豆知識などの有益な情報を描いたり、お客さんが何に困っているのかを直接聞いてサポートしたり……。こうした工夫を全店で徹底すれば、より洗練された店づくりができると思いますよ」(同)
SNSで話題になることの多い、みらべる。今後も存在感を高めていけば、イオンやイトーヨーカドーを脅かす日が来るのかもしれない。
(文=谷口京子/清談社)
●取材協力/今野保(いまの・たもつ)
ショッピングアドバイザー。全国のスーパーを年間で100店以上訪れる。テレビや雑誌などを通じて「いいものを楽しく、安く、賢く買うための知恵」を生活者に提案している。