登壇したグローバル基準で対策をしている2社に聞いたところ、すでに「被害者が申告しなくてもハラスメントに介入できる」仕組みがありました。
「社員のメールを監視しているので、まずいことがあったら本人から訴えがなくても介入する」という米系金融機関。この会社では入社時に「セクハラやパワハラを行ったらすぐにクビになっても文句は言いません」という書類にサインをしているそうです。
アメリカでは北米トヨタのハラスメント訴訟で「総額1億9000万ドル」という高額の請求を受けています。米系企業はハラスメントのリスクを非常に重く見ています。同時に人材獲得戦略でもあります。「優秀な人材がパワハラ、セクハラだらけの企業では来てくれない」という危機感です。現に東海岸でMBA(経営学修士)を取得し、かつてならウォール街に就職したような人材が、「今はみなグーグルなどの夢のある企業に行ってしまいます」と米系証券の人事担当者も嘆いていました。
また世界的コンサルタント企業アクセンチュアは、働き方改革の項目としてハラスメント対策を入れています。四半期ごとの働き方改革の進捗度調査の項目に、ハラスメントの項目も入っており、ハラスメントは会社の生産性にかかわる問題なのです。チームや個人の生産性の調査も常に行っており、明らかにチームがうまく回っていない場合、ハラスメントの現状や原因について分析でき、対応方法を考えるベースになっているそうです。
ビザ・ワールドワイド・ジャパン代表取締役社長の安渕聖司さんはこう言います。
「ハラスメントを目撃した社員は会社に通報する義務があります。匿名でもできます。一方、報復禁止方針も徹底しています。ハラスメントフリーな環境をつくることを全社員の行動指針として位置付けています」
グローバルな企業では、すでに申告しなくてもハラスメントに介入する仕組みがあり、また企業のリスク、生産性、人材獲得にかかわる問題として重視されているのです。
30社から学ぶ効果的なハラスメント対策とは?
研究会で明らかになった日系企業、外資系企業の事例から、効果的だったことをいくつか拾ってみました。
(1)ホットラインや対応窓口について
・窓口は社内・社外の両方に設ける。3つの窓口があるところもある。
・対応する人は男性か女性かを選べる。