(2)研修について
・あらゆる階層の研修を行う。トップ層の研修も行われる。
・対応窓口の担当者の研修をする。
(3)調査
・社員満足度調査をまめに行い、そのなかにはハラスメントも項目として入っている。
(4)その他効果的な事例
・相談事例の紹介。
・毎年ハラスメント撲滅月間を設けてトップメッセージを発信。
・ハラスメント理解のための冊子や、上司が相談を受けた際の対応フローを作成し、配布。
・外部機関にハラスメント対応について評価をしてもらう。
・懲罰委員会で解雇処分を受けた社員がいた場合、部署名、氏名を伏せた上で社員に事実を開示。
日本企業は厚労省のハラスメント対策基準は守っているといいますが、現状を見ると、ハラスメント被害者を救済できていません。特に「社内ではなく社外が加害者、または被害者の場合の事案」については、新たな対策が必要な段階ではないかと思います。
研究会の最後に「自分の会社にハラスメントがあると思う人」と手を挙げてもらったところ、全員の手が挙がりました。しかし「きちんとハラスメントが通報されていると思う人は?」と聞いたら、先進的な対策をとっている企業ですら「すべては難しい」として、手が挙がらなくなりました。
究極のハラスメント対策とは何か?
セミナーや窓口があっても、機能していなければ意味がありません。ある新聞社の女性は「うちにも窓口はあるが、担当しているのが元記者の先輩で、パワハラ・セクハラ体質の人。とても言えない」と言います。
まずはきちんと通報制度が機能し、さらにその先には加害者が懲戒されることで、全体の意識が変わっていく。それは第一歩です。「どうせ変わらない」という絶望感――。今回メディアで働く女性たちの声を聞いて、彼女たちのなかにある「絶望」を感じました。
やはり究極のハラスメント対策とは、上層部の多様性です。「パワーのあるサイドに、女性が半分、せめて3分の1ぐらいはいる」という状況になれば、絶望に塗りつぶされた光景もかなり変わるのではないでしょうか?
企業のハラスメント対策についてハーバード大学の社会学部教授フランク・ドビン氏の研究がありますが、やはりセミナーや通報制度だけでは難しい。「何よりも効果があるのは、女性がその企業のコアの仕事にいる割合を増やし、管理職などマネジメント職の割合を増やすこと」とドビン氏は言っています。
また、シカゴ大学教授の山口一男氏はこう書いています。
「このような日本社会を変え、人々が性別にかかわらず生き生きと働ける社会を生み出すには、今後一人でも多く、政治や経済活動での意思決定の場に女性を送り出していくことが根本対策であると思う。(中略)女性の活躍推進を含む働き方改革を唱える政府自身が、それを反故にするようなセクハラ問題への対応をとったことは為政者の認識不足というより、これこそまさに男性中心社会の女性活躍推進の限界を露呈したのだといえるのではないだろうか」(5月2日付「ハフポスト」記事『女性差別とセクハラ問題―財務官僚のセクハラと麻生大臣の発言から考えたこと』より)
今後、女性活躍を成長戦略と位置づける日本政府がとるべき道はなんでしょう?
ベルギーには「職場における暴力、モラルハラスメント及びセクシャルハラスメントからの保護に関する法律(2002)」があり、フランス、カナダなども2000年代に法整備が進んでいます。日本でも早急に「ハラスメント防止法」などの法整備が望まれます。なぜかといえば「『セクハラをしてはいけない』という禁止の規定がないのです。禁止の規定がないので、禁止の対象となる行為の定義もありません」と独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)の内藤忍副主任研究員はハフポストのインタビューに答えています。
また、東京証券取引所が定めるコーポレートガバナンスコードの改訂により、「女性取締役が1人いること」を規則に加え、さらなる「多様性の担保」を推進することが、リスクを軽減することにつながるでしょう。
(文=白河桃子/少子化ジャーナリスト、働き方改革実現会議民間議員、相模女子大学客員教授)