国内で同行は、ヒトから機械へ、業務の担い手をシフトさせようとしている。省人化によって国内従業員の30%が削減される計画だ。それに加え、今後5年程度で行員が接客する店舗数を半分に削減することも計画されている。突き詰めて考えると、預金・決済などの銀行サービスは人が支えるのではなく、IT関連のテクノロジーによって運営されることが目指されている。
これまでの自前主義からの脱却
今後の経営を支えるIT分野でも、同行は変革を目指している。従来、大手銀行はITインフラを自行内で整備し、運用してきた。傘下のIT子会社がIT企業と連携し、サーバーや勘定系システムの設計から保守を行ってきた。その他の分野でも、経済調査は総合研究所(シンクタンク)が担うなど、多くのビジネスを自社のグループ内で成立させようとしてきた。いわば、自前主義だ。
社会の変化に伴って、ITの規格は秒進分歩のスピードで進化する。それに企業単独で対応することが合理的とは限らない。むしろ、社外と規格を合わせ、他企業とITインフラを共有したほうが効率的なケースも出てくる。楽天が他社の通信網を借りて携帯電話事業を進めようとしているのはその例だ。
三菱UFJ銀行は、従来の発想を転換しようとしている。三井住友銀行とのATMの相互開放に向けた取り組みは、自行の支店網を維持することへのこだわり、自前の規格に基づいたIT管理の発想を改め、社外との連携によって変化に対応しようとする姿勢の表れだ。
今ではコンビニにATMが設置されている。銀行の支店がなければ預金を引き出せないわけではない。イオン銀行が進めるキャッシュアウトサービス、モバイル決済や電子マネーを用いたキャッシュレス化が進めば、顧客の銀行離れは加速するだろう。
その動きを食い止めるには、銀行が満足度の高いサービスを提供するしかない。支店が閉鎖され、行員が配置された店舗が減ることに不満を持つ人も多いだろう。その不満を解消し、使いやすく安心できる銀行サービスを生み出すためには、自行内外のインフラを共通化し、規模の経済効果を追求する意義は大きい。
支店の削減、ATMの共同運用に加え、三菱UFJ銀行はMUFGコイン(デジタル通貨)の開発・実用化にも取り組んでいる。それは、同行がこのままでは経営基盤がぜい弱化すると危機感を抱き、新しい発想に基づいた経営を目指していることにほかならない。IT分野を中心に、サービス創出の面でも銀行同士の関係は強まるだろう。