加速する銀行間の連携の動き
国内最大手の三菱UFJ銀行が他企業との連携を重視し始めたマグニチュードは大きい。ATMの共有化は、各行間の支店網をつなぎ、金融サービスへのアクセスィビリティを確保するために欠かせない。利用時間、料金が異なるATMの規格を統一し、その上、無料にできれば銀行サービスの利便性は高まる。
今後は大手銀、地銀をまたいで業務やIT面での連携が進むだろう。そのなかでICT関連のテクノロジーを用いて、銀行がITベンチャーと高齢者にも使いやすいアプリを開発し、実用化できれば相応の変化が見込める。つまり、「支店がなくなると銀行は使いにくくなる」ではなく、「支店がなくても、従来以上に使いやすい」と利用者が感じられるサービスを提供することが求められる。
その上で、銀行がどのような社会的な役割を発揮するかが重要だ。それは、成長の源泉を発掘することだろう。2019年度、三菱UFJ銀行は人工知能(AI)を用いた中小企業への融資を開始する見込みだ。創業して間もない企業への融資も目指されている。加えて、同行はアジア地域での事務処理をマニラに集中し、タイやインドネシアでは貸し出しを増やし、収益基盤を強化しようとしている。
銀行間の連携は、実体経済にも変化をもたらすだろう。中小企業の海外進出支援は、潜在的なニーズが期待できる分野だ。海外進出に関するコンサルティング・サービスや現地での資金調達をアレンジする力が地銀に備われば、需要を取り込むことができる。国際業務を行うための自己資本比率の基準を考えれば、地銀にとって、三菱UFJ銀行のように海外ネットワークを強化している銀行と組むメリットは大きい。それが連携を加速させる。
現在の三菱UFJ銀行は、コストの削減と新しい発想の導入を通して、総合金融のプラットフォーマーを目指しているといえる。今後も他企業との連携や規格の共有を目指した取り組みは増えるだろう。国内の銀行勢の多くがコストカットを優先するなか、同行の取り組みが多くの企業や金融機関が、潜在的な成長の源泉を見いだし、社会の活力向上につながることを期待したい。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)