今年のゴールデンウィークには、多数の外国人観光客(インバウンド)が日本に押し寄せた。ひときわ多かったのが、大阪・ミナミの繁華街として知られる心斎橋筋である。2017年1月に、関西国際空港にLCC専用ターミナルが開業したことで、中国を中心とした訪日客による消費の底上げにつながった。
心斎橋商店街で、門前市をなす賑わいを見せているのがドラッグストアだ。中国人の“爆買い”が話題になった時は、炊飯器、魔法瓶、温水洗浄便座、セラミック包丁が「四宝」と呼ばれたが、化粧品と大衆薬が取って代わった。リップクリームや目薬なども大人気だ。
心斎橋商店街には全国のドラッグストア各社が出店している。「“中国人御用達”ドラッグストア商店街に名前を変更したほうがいいのではないか」と皮肉る向きもある。
このようにドラッグストアは元気だ。日本チェーンドラッグストア協会の2017年版「日本のドラッグストア実態調査」によると、全国の総店舗数は1万9534店。M&A(合併・買収)によって企業数は減少傾向が続いているが、直近の2年間で1000店以上が新たに出店した。
2017年(暦年)の推定売上高は6兆8504億円。前年比5.5%増の大きな伸びとなった。売上高が6兆円を割った百貨店を上回る。調剤分野への取り組みや食品の取り扱い強化に加え、大都市でのインバウンド需要を取り込んだと分析している。
ドラッグストアの代名詞、マツキヨが首位から陥落
【ドラッグストア主要5社の17年度の連結業績】
※以下、社名(決算期)…売上高、営業利益(前期比の伸び率、▲はマイナス)
・ウエルシアHD(2月決算)…6952億円(11.6%)、288億円(19.7%)
・ツルハHD(5月期予想)…6700億円(16.1%)、399億円(13.1%)
・サンドラッグ(3月決算)…5642億円(6.8%)、360億円(5.9%)
・マツモトキヨシHD(3月決算)…5588億円(4.4%)、335億円(18.1%)
・コスモス薬品(5月期予想)…5524億円(9.9%)、200億円(▲10.1%)
ドラッグストア業界は、M&A旋風によって群雄割拠の戦国乱世時代の終わりを迎えつつある。
2017年、22年ぶりに首位が入れ替った。17年の売り上げでイオン系のウエルシアHDがマツモトキヨシHDを上回った。
ドラッグストアの代名詞的存在だったマツモトキヨシHDは、さらに順位が後退する。18年3月期の連結売上高は5558億円。売上規模では業界4位となり、5位のコスモス薬品に猛追されている。5位転落の危機といっていい状況だ。
マツキヨの業績が悪化したわけではない。都市部の店舗が多いことから訪日外国人観光客の消費が好調で3期連続で最高益を更新した。ただ、競合他社のようにM&A路線を採っていないため、売り上げで追い越されていったのだ。ドラッグストアの王者・マツキヨが、いつM&Aの封印を解くかが注目されている。