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垣田達哉「もうダマされない」

安倍政権、町の飲食店等にも全工程の衛生監視・記録を義務化…現実無視で多大な労力強制

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
安倍政権、町の飲食店等にも全工程の衛生監視・記録を義務化…現実無視で多大な労力強制の画像1「Gettyimages」より

 厚生労働省が現在開会されている通常国会に提出している「食品衛生法改正案」は、中小の食品関連企業にとってかなり負担になる内容で、経営の継続にかかわる問題を秘めている。

 この法案の目玉が「HACCP(ハサップ)」による衛生管理の制度化である。厚労省はHACCPについて、次のように定義している。

「食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析(HA)し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を売ることができるかという重要管理点(CCP)を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理手法」

 簡単にいうと「食中毒や異物混入防止策」であるが、問題は、この手法を導入することを、大手企業だけでなく、すべての食品関連事業者に義務付けようしていることだ。製造・加工はもちろん、飲食、調理、販売等を行う事業者も対象になる。八百屋、魚屋、肉屋など個人経営の小売店も、夫婦2人で営んでいる飲食店も、食品を扱っている事業者すべてがHACCPを導入することを義務付けようとしている。

 大手企業は、世界基準であるコーデックスに準じた「基準A」を導入することになる。小規模事業者、店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理施設(菓子製造販売業、食肉販売業、魚介類販売業、豆腐製造販売業、弁当調理販売業等)、提供する食品の種類が多く、変更頻度が頻繁な業種(飲食店、給食施設、惣菜製造業、弁当製造業等)、一般的衛生管理による管理対応が可能な業種(包装食品の販売業、食品の保管業、食品の運搬業等)は、簡易的な「基準B」を導入する。

 簡易的な基準Bといっても、その内容を見ると「事業者にとってはかなりの負担を強いる」ことになりかねない。「食品等事業者は取り扱う食品の特性等に応じた計画を作成し、管理を行う」こととし、食品等事業者団体が作成した手引書を参考にすることになっている。

 たとえば、公益社団法人日本食品衛生協会の「HACCPの考え方に基づく衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」では、実施することとして「衛生管理計画の策定」「計画に基づく実施」「確認・記録」の3つを挙げている(表1参照)。小規模な一般飲食店とは「従業員が数名程度の飲食店で、注文に応じてその場で調理し提供する事業者」のことである。

安倍政権、町の飲食店等にも全工程の衛生監視・記録を義務化…現実無視で多大な労力強制の画像2

詳細な内容をチェック・記録

 では、具体的に何をしなければならないか。手引書からその一部を拾い上げると次のようになる。

 まず、一般衛生管理のポイントは以下の通りだ。

(1)原材料の受入の確認

いつ……原材料の納入時
どのように……外観、におい、包装の状態、表示(期限、保存方法)を確認する
問題があったとき……返品し、交換する

(2)庫内温度の確認(冷蔵庫・冷凍庫)
 
いつ……始業前
どのように……温度計で庫内温度を確認する(冷蔵:10℃以下、冷凍:-15℃以下)
問題があったとき……異常の原因を確認、設定温度の再調整/故障の場合修理を依頼。食材の状態に応じて使用しない又は加熱して提供

 その他、表1の(3)-1、(3)-2、(3)-3、(4)-1、(4)-2と、こうした確認事項がかなり詳細に決められている。

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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