リア充代行、レンタル家族…孤独関連ビジネスが拡大する日本市場
今年5月、アメリカの大手医療保険会社が2万人を対象に「孤独に関する調査」を実施した。そのうち回答者の46%から「孤独はもはや疫病の域に達している」との結論が出されている。この調査で興味深いのは、72歳以上の高齢者の孤独度よりも18~22歳の若年層の孤独度のほうが高いという結果だ。さらに、イギリスも同様の調査から同国には900万人も孤独を感じている人がいるとし、政府は「孤独問題担当国務大臣(Minister for Loneliness)」という大臣職を創設している。
こういった社会問題は福祉の面から語られがちだが、ビジネスやマーケティングの観点からみると何が読み取れるだろうか。立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に話を聞いた。
孤独を受け入れるか、隠そうとするか
「孤独は現代病の代表格となりつつありますが、孤独に対するニーズに応えるためのビジネスも増えてきています。むしろ、新たなビジネスが展開できる土壌と捉えることも可能な時代になったといえるでしょう。現状で展開されているビジネスでの手法の分析から、『今の日本で人々は“一人で過ごすという行為”に何を求めているのか』ということを読み説くことができるのではないでしょうか」(有馬氏)
有馬氏いわく、当事者が孤独をどう受け止めるかによって求めるサービスも違ってくるという。
「まず、『孤独肯定型ビジネス』があります。これは孤独であることを積極的に受け入れて、むしろその立場を楽しもうとする人たちに向けてのもので、例えば“一人飲み”“一人カラオケ”“一人旅”を抵抗なく楽しめる人向けのサービスです。自分へのご褒美として一人を満喫したい人向けのサービスもこの範疇ですね」(同)
このニーズに対するビジネスには、他にも居酒屋の一人向けの夜ご飯セットや、旅館の一人宿泊用プランなど、店舗などの施設を一人でも気軽に利用してもらえるサービスの提供が多い。一方、一人を肯定的に受け入れられる人もいれば、その逆のタイプの人も世の中には大勢いる。この中で孤独を隠したい人に向けたビジネスも最近は増えてきている。
「孤独な状態を他人に隠したい人向けのものは『孤独隠蔽型ビジネス』と呼ぶことができると思います。披露宴など対外的に家族を必要とする席で、世間体のために家族を装った人員を派遣する“レンタル家族”や、SNSの写真などで日常生活の充実を他者へアピールすることの手伝いをする“リア充代行業”といったものがこれらの代表例です。『孤独隠蔽型ビジネス』では他者に孤独であることを悟られないためのサービスが提供されます」(同)