“緩やかな談合”を行っている大手3社
では、なぜ生産調整を行っているのに、DRAMの売上高が増大しているのか? これは、DRAM大手3社が生産量を抑制し、「需要よりちょっと足りない状態」をつくり出しているため、DRAM価格が勝手に高騰していることに原因がある。
実際、市場調査会社のDRAMeXchangeは2017年10月30日に、4GビットのDDR4 DRAMモジュールの価格は、2016年第2四半期に13ドルだったが、2017年第4四半期に30.5ドルになったと発表した。つまり、1年半で2.3倍に高騰した。
このことから筆者は、DRAM大手3社が“緩やかな談合”を行っていると推測している。“緩やかな談合”という意味は、3社の幹部がどこかで会って密談しているのではなく、お互いがお互いを見ながら、阿吽の呼吸で生産量の抑制を行っているのではないかと想像している。
これは、DRAM大手3社にとっては素晴らしい状況だ。生産量を抑制しても、価格だけが勝手に吊り上がっていくのである。DRAMeXchangeによれば、2017年第3四半期に各社のDRAM事業の営業利益率は、サムスン電子が62%、SK Hynixが56%、マイクロンが50%を記録した。
DRAMメーカーは、“濡れ手で粟”状態にあり、笑いが止まらないのではないか。
中国に冷水をぶっかけられたDRAM大手3社
中国には「世界の工場」といわれるようになった従業員数130万人を誇る台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)の巨大な組み立て工場(EMS)がある。ホンハイは、世界で生産されるPCの約 9割、スマートフォン(スマホ)、各種デジタル家電、サーバーなどを組み立てているため、大量の半導体が必要である。
現在、中国は“ホンハイ効果”により、世界の半導体の3分の1以上を消費している。といっても、中国国内で製造できる半導体はたかだか10数%にすぎないため、80%以上を輸入に頼っている。その結果、中国では、原油を抜いて半導体が貿易赤字の最大の元凶になってしまった。
その元凶の一翼を担っているのが、DRAMである。何しろ中国はDRAMをつくることができない。それゆえ、輸入するしかない。そのDRAM価格が1年間で2.3倍以上になり、その価格高騰が止まらないのである。