5月29日、液晶パネル最大手のジャパンディスプレイ(JDI)の株価が109円と上場来安値を更新した。この日は一時、2割超下落し、2016年の安値138円(調整済み)を大きく割り込んだ。14年3月に新規公開したJDIの公開価格は900円。上場来高値は同じく14年4月の836円である。公開価格を1度も上回ったことのない、極度に業績不振の官製企業だ。
経済産業省が監督する産業革新機構が35.5%を出資する筆頭株主だが、産革機構にJDIの再生は荷が重いだろう。会社更生法を申請して、一から出直すべきとの声も多い。その上で、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買い取ってもらったり、ホンハイの傘下に入ったシャープに経営を任せるといった方法もある。
液晶パネルの最大手といっても、経営基盤は極めて脆弱だ。18年3月期連結決算は、主力のスマートフォン向け液晶パネルの販売不振とリストラ費用がかさみ、最終損益が4期連続の2472億円の赤字(前期は316億円の赤字)となった。苦境を脱するのは至難の業だ。
韓国メディアが「来年発売されるiPhoneの新モデルのディスプレイには、有機ELが採用される」と報じた。有機ELは歩留まりの悪さなど生産面でも課題が指摘されており、液晶からの全面切り替えには懐疑的な見方が多かった。この報道が事実なら、有機ELで完全に出遅れているJDIは壊滅的な打撃を受けることになる。
経営に失敗した原因は3つ挙げられる。
ひとつ目は、主力のスマホ向け液晶の需要の見誤りと、競争激化の大波に沈んだこと。ふたつ目は、海外メーカーとの資本提携構想が難航していること。筆頭株主の産革機構は早期に提携先を見つけようとしているが、JDIに興味を示す外資は皆無だ。3つ目は、昨年8月の中期経営計画に掲げた有機ELシフトの遅れだ。JDIは同社で有機ELを開発してきたが、16年末に有機ELパネル開発会社のJOLED(ジェイオーレッド)を連結子会社にすると発表した。両社の技術を結集して有機ELの「リーディングカンパニーを目指す」計画だった。しかし、JDIはJOLEDを連結子会社にすることを今年3月末に断念した。