中国、韓国に圧倒的な差をつけられたJDI
JDIは、6月19日の株主総会後、月崎義幸執行役員が新社長に就任する。有賀修二社長は退任するが、技術顧問として残る。18年3月期連結決算で最終損益が4年連続で赤字となったため、「経営責任」を明確にするというのが理由だが、有賀氏は社長を辞めても技術顧問として残るという中途半端な“責任”だ。
18年3月期の営業損益は617億円の赤字(前期は185億円の黒字)だった。初の営業赤字である。売上高から製造原価を引いた売上高総利益(粗利)の段階ですでに赤字の状態なのだ。売上高は前年同期比18.9%減の7175億円。米アップル向けの液晶パネルの受注が低迷したのが響いた。事業構造改革費用1423億円を計上したため最終赤字が拡大した。
東入来信博会長兼CEO(最高経営責任者)は留任する。月崎氏は4月1日に副社長になったばかりだが、6月19日に社長になる段取り。東入来会長は「いかなることがあっても19年3月期は営業黒字化する」と必死に前を向くが、前途は多難だ。19年3月期も最終赤字は避けられそうにない。
JDIは3月30日、第三者割当増資などで550億円を調達すると発表した。アップル向けの液晶パネルの発光ダイオードを手掛ける日亜化学工業から50億円を調達する。日亜化学の出資比率は議決権ベースで3.5%になる。また、海外の機関投資家15社が300億円の増資を引き受け、そのうちの最高額は60億円拠出する香港の投資運用会社。さらに、生産停止中の石川県・能美工場を筆頭株主の産革機構に200億円で売却する。産革機構はこの工場をJOLEDに現物出資する。能美工場は中大型の有機ELパネルを量産するJOLEDの主な拠点となる。
JDIは3月30日、有機EL開発のJOLEDを子会社化する計画を撤回すると発表した。16年12月にJOLEDへの出資比率を15%から51%に引き上げる計画を明らかにし、17年9月末までに子会社にすることになっていたが、この方針を取り下げた。JDIは有機ELパネルの量産化計画を先送りすることになった。すべてが後手に回っている。
何より、18年1~3月期の地域別売上高を見ると、先行きの深刻さがはっきりとわかる。「中国向け」が前年同期比76%減と、4分の1以下に激減した。「欧米向け」は同29%減。中国では安値競争に巻き込まれ、現地勢に後れをとっている。
政府資金を活用する天馬微電子や京東方科技集団(BOE)は減価償却が極端に少なく、安値競争を仕掛けても利益が出る構造だ。金額ベースでは世界首位のJDIだが、利益が出ない競争に直面し、泥沼状態に陥った。