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高安雄一「隣国韓国と日本の見方」

韓国経済、一気に停滞局面突入か…米国と中国への過度な「依存経済」、米中貿易摩擦で裏目

文=高安雄一/大東文化大学教授

2つのエンジンが止まる

 しかし米中間の貿易摩擦は、韓国の力強い景気に暗い影を落とし始めている。実体経済にはまだ影響は出ていない。中国やアメリカ向けの輸出は共に好調であり、中国向け輸出の前年同月比は2018年に入っても2桁の増加が続いている。アメリカ向けの輸出は増減を繰り返す展開となっているが、5月は2桁の増加であった。これは中国とアメリカの景気がまだ減速していないから当然であるといえる。

 しかし最近は気になる動きも出ている。為替レートは、景気の力強さを反映してウォン高基調で推移していたが、6月に入りウォン安に転じた。株価指数も下落が目立つようになってきた。金融当局の分析によれば、株価指数については米中の貿易摩擦に対する不安感により外国人による韓国株の売越額が拡大したため下落した。また為替については、米中貿易摩擦に関連した不安心理によりウォン安となっていると分析されている。

 米中間の貿易摩擦がエスカレートすれば、中国の景気に影響が出ると考えられる。中国はインフラ投資が一服して今後の景気に不透明感が出ているなか、アメリカ向け輸出が減少すれば景気が腰折れる可能性がある。アメリカの景気については貿易摩擦からの直接の影響は小さいとみられるが、中国の景気が失速すれば、韓国の景気も2つのうちの1つのエンジンが不調になることから悪影響を免れない。またアメリカは利上げにより景気の軟着陸を図っているが、過度にブレーキが利きすぎれば景気が後退する可能性も否定できない。そうなれば韓国経済を支えてきた2つのエンジンが止まることとなり、景気が一気に後退局面に入る可能性が高まる。

 このように米中間の貿易摩擦は韓国にとって対岸の火事ではなく、まさに自国経済も燃え上がるリスクをはらんでいる。さらには、先に述べたように、アメリカが韓国からの自動車輸入に高関税をかける可能性も排除できず、この場合も韓国の輸出、ひいては景気に悪影響を及ぼす。いずれにせよ、今後の韓国景気はトランプ大統領の動きに翻弄されそうであるが、中間選挙を前に過激さを増すと考えられるアメリカの通商政策を勘案すれば、良い方向には向かないことが予想される。しばらくの間、韓国景気は嵐に翻弄されることになりそうである。
(文=高安雄一/大東文化大学教授)

高安雄一/大東文化大学教授

高安雄一/大東文化大学教授

大東文化大学経済学部教授。1966年広島県生まれ。1990年一橋大学商学部卒、2010年九州大学経済学府博士後期課程単位修得満期退学。博士(経済学)。1990年経済企画庁(現内閣府)に入庁。調査局、人事院長期在外研究員(ケルン大学)、在大韓民国日本国大使館一等書記官、国民生活局総務課調査室長、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て、2013年より現職。著書に『やってみよう景気判断』『隣の国の真実 韓国・北朝鮮篇』など。
大東文化大学経済学部高安雄一プロフィールページ

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