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オリンパス、腐敗防止法違反の疑い…日米当局に動き、中国マフィア系会社と取引との指摘【5】

文=山口義正/ジャーナリスト
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中国深セン工場を即日営業停止

 オリンパスが深セン工場の操業停止を発表したのは、それから1カ月半ほど経った5月7日だった。この日の取締役会で決議され、即日操業を停止した。

 オリンパスは操業停止の理由として、稼働率の低下や設備の老朽化を挙げている。しかしこれを鵜呑みにはできない。デジタルカメラの需要そのものが減退しているのは確かだが、深センの現地法人(OSZ)は営業黒字を保っているうえ、「設備の更新もしたばかり」(オリンパス関係者)だからだ。現地メディアの「証券時報」も工場従業員を取材し、「数日前に下半期の賃上げを通知されたばかりで、(操業停止の報に)ショックを受けた」「9月に新製品が導入されると聞かされており、思いもよらなかった」とのコメントを伝えており、操業停止はよほどの事情により、急転直下で決まったとしか思えない。

 この操業停止を新聞各紙は一斉に報じた。贈賄疑惑と結びつけて報じる新聞報道も少なくない。ただ、オリンパスのために付け加えると、操業停止後の工場を売却するかどうかについて、オリンパスのプレスリリースは一切触れておらず、筆者が入手した情報を裏付ける内容とは言い切れない部分も残った。

 前回までの記事で触れたように、オリンパスのアジア・パシフィック地域統括会社(OCAP)のマネジャーは、2017年に3つの海外有力法律事務所に意見書を求めたところ、いずれも「深センでのコンサル契約は米海外腐敗行為防止法に違反し、高額の罰金を支払わなければならないリスクが高い」という趣旨の意見書が出されていた。

 深セン工場の操業停止が発表されるのと前後して「FACTA」編集部には、オリンパス米国現地法人の代理人弁護士から内容証明郵便が届いた。3つの意見書を含めて、オリンパスから漏出した内部文書を返却せよという内容である。しかしこの内容証明は手遅れだった。「FACTA」編集部では3通の意見書のコピーを、米司法省や日本の証券取引等監視委員会に提出し終えていたのだ。

 オリンパスの社員弁護士でありながら、会社を訴えた榊原拓紀弁護士が社外取締役に送付した通知書や、3通の意見書は、いずれも米国などの外国法を意識した内容になっている。しかし日本の証券取引等監視委員会もオリンパスの贈賄疑惑や開示姿勢を座視していられなくなったのか、すでに日本取引所グループの尻を叩いて、オリンパスに情報開示を迫らせるようになっていた。実はオリンパスが1月31日に発した「当社及び当社子会社に関する一部報道について」と題するプレスリリースがそれだ。深セン疑惑を否定する内容の情報開示だが、この頃には証券市場の番人である監視委もオリンパスの開示内容や姿勢に疑念を抱いていたのだ。

 オリンパスは国内外の行政当局から完全に睨まれることになるだろう。それはオリンパスにとって最悪の展開といってよかった。
(文=山口義正/ジャーナリスト)

●山口義正
ジャーナリスト。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞記者などを経てフリージャーナリスト。オリンパスの損失隠しをスクープし、12年に雑誌ジャーナリズム大賞受賞。著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)

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