変化を支えるテクノロジー創造の重要性
村田製作所の経営を見ていると、事業ポートフォリオの分散という意味での“収益源の分散”が、常に成長に必要とは限らない。
重要なことは、長い目で社会の変化を考え、変化を支えていくテクノロジーを生み出していくことだ。そのなかで、コンデンサーや基盤に関するテクノロジーを応用して、需要を生み出すことができれば、一般的にいわれるような収益源の分散がなくても問題はないだろう。ただし、特定の産業や業種、あるいは消費者などをターゲットにし、そこから収益を獲得することに固執してしまうと、環境の変化に適応することは難しいだろう。村田製作所はスマートフォンから自動車へと需要源の乗り継ぎをうまく進めているといえる。
村田製作所には、さらなる革新を期待したい。先端分野のテクノロジーの活用が見込まれるのは、自動車だけではない。私たちの生活のあらゆる場面でIoT(モノのインターネット)化が進んでいる。変化は今後も続く。将来的に“一家に一台、あるいは一人に一台ドラえもん”のような状況が実現してもおかしくはない。同社が“夢”を実現するためのテクノロジーを生み出し、それが活躍するイメージを示すことができればいいだろう。
太陽誘電株式会社など、村田製作所の国内外のライバル企業も、コネクテッドカーやEVの開発、IoTの加速からの需要を取り込み、業績の拡大を目指している。村田製作所が他社との差別化を図るためには、他社にはないテクノロジー面での優位性を確立していくことが欠かせない。それは、収益源の分散とは違う発想だ。
そうした取り組みがないことには、企業の持続的な成長はおぼつかないともいえる。特に、部材・部品メーカーの業績は、米国や中国の最終製品メーカーの考えや規格に左右される部分が大きい。村田製作所には、最終製品の性能に決定的な違いをもたらすテクノロジーの開発などを通して社会からの支持を取り付けていくことを求めたい。そうした企業が増えれば、わが国から世界をあっと驚かすヒット商品が生み出されることもあるだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)